乙一「天帝妖狐」&「A MASKED BALL ―及びトイレのタバコさんの出現と消失―」

とある町で行き倒れそうになっていた謎の青年・夜木。彼は顔中に包帯を巻き、素顔を決して見せなかったが、助けてくれた純朴な少女・杏子とだけは心を通わせるようになる。しかし、そんな夜木を凶暴な事件が襲い、ついにその呪われた素顔を暴かれる時が…。

表題作「天帝妖狐」は、一体どうしてこういうタイトルなのかよくわからない(笑)。狐つきの話だからというだけでは、このタイトルにはならないだろう。
 それはともかく、パターンといえばパターンそのものでしかない物語なのだが、最後の、お互い知らない振りでの間接話法での語り合いは、何だかわからないが泣けてしまった。

併録されている(集英社文庫版)「A MASKED BALL ―及びトイレのタバコさんの出現と消失―」。こちらは巻頭に入っていて、しかも軽快に読めるタッチなのでかどうか、不思議と何回か読み返してさらに面白かった。
 どこがどうということもなく、そんなに「おおー」という傑作のような気もしないのだが、乙一独得の文体が楽しめるのかもしれない。
 ホラーの振りして実は本格だったところも笑える(笑)(?)。
 読んだのは3度目かと思うのだが、「V3」の正体が、今更やっとわかった。びっくり(笑)。なるほどね。ミスディレクションがすごい。というか私が鈍い?(^^;

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乙一「The Book」 jojo's bizarre adventure 4th another day

<祝「ジョジョ」20周年!! 乙一渾身の小説化!!>
「週刊少年ジャンプ」「ウルトラジャンプ」誌上で絶大な人気を誇る荒木飛呂彦氏の長期連載『ジョジョの奇妙な冒険』を稀代の若手作家乙一氏が構想・執筆に2000日以上をかけ、渾身の小説化を実現!!
カラー口絵および全6章のトビラ絵、本文イラストは荒木飛呂彦氏描き下ろし。ジョジョ“Stand up”杜王町MAP付き、革表紙風装丁。

『ジョジョ』シリーズ第4部・杜王町を舞台に起こったもうひとつの事件。
構想・執筆2000日以上、鬼才・乙一が渾身のノベライズ!!


平井和正が「きまぐれオレンジロード」を書くと、「ボヘミアンガラス・ストリート」ができあがった……という伝説のような現実がある。
乙一が「ジョジョの奇妙な冒険」を書くと、それは一体、何ができあがることになるんだろうか。

結論から言えば、それは紛れもない「ジョジョ」であり、乙一細胞はかなりな程度希釈されていた。……が、自分でこう書いておいてなんだが、……本当にそうだろうか。

出てくる登場人物たちは、乙一が新たに創造した者たちはもとより、ジョジョたちすら、あまり乙一小説の登場人物として違和感がない者たちではなかったか。

映画になった「傷」――これが“スタンド”の能力だったなら、そのまま「ジョジョ」になっているんじゃあないか。

他の、「しあわせは子猫のかたち」とか、「きみにしか聞こえない」とか、ジョジョや“スタンド”の像が出てこないだけで荒木飛呂彦のコミックに描かれる物語につながっているのではないのか。

そもそも乙一のデビュー作「夏と花火と私の死体」など、荒木飛呂彦の短編そのものだろう。

だから――乙一の「ジョジョ」が紛れもなく「ジョジョ」であり、“異質な細胞としての”乙一の部分が少なく感じられたとしても不思議はないのだ。

途中、康一が「僕たちのマンガ」みたいな表現をしていることと、“敵”の能力がどうしてもヘブンズ・ドアーとかぶって感じられることの2点が瑕疵と言えば瑕疵か。


乙一「しあわせは子猫のかたち」

「失踪HOLYDAY」(角川スニーカー文庫)あるいは「失はれる物語」(角川文庫)に収録。
うまく生きられない「僕」とやさしい幽霊の切ない一瞬。



この話は、昔自分が書いた物語を思い出させてしまった。感傷的で、甘えて、けれど、こんなこと今更言っても仕方ないのだけども、どこかしら一生懸命ではあったあれを。
 筋立ては違うけれど、語っているものが同じようでありすぎて、けれどもちろん、こうしたタイプの物語はいくらでもその昔からあるにはあるに違いない。

 この「しあわせは子猫のかたち」の弱点は、子猫(「子猫」ではなくなっていたことが、犯人を指摘する1つの材料になっていたけれど)までもが幽霊になれてしまったということだと思う。ヒロインが幽霊であることはいい、けれど、幽霊になるということ、幽霊がいるということがそんなに普遍的なものではない世界の話である以上、そうそう簡単に幽霊が出現できてしまっては困る。もしそれが可能であるのなら、犯人に殺されたという男もしっかり幽霊になれていなければならないだろう。
 ヒロインと、猫だけがこうすんなり幽霊になれたということならば、その原因・理由というものがなければならないはずだが、それは語られていない。語られる必要はない物語なのだけれど、物語の整合性という点から言えば弱点になってしまっていることは否めない。
 この「原因・理由」が語られることが、さらにこの物語を深く感動的にすることが可能だったとしたら、この作品はさらに作品としてすばらしいものになれたと思う。語られる必要のないらしい「原因・理由」でしかなかったので語られなかったとすれば、その「しかなかった」という点で、やはりこれが弱点になってしまうだろう。

 と、偉そうに書いているのだけれど、そんなことは、今これを書きながら、自分が書いた物語のことを思い出しながら考えたことなので、読んでいたときは、どうしてこの子猫までが・・・とは思いながら、それ以上にはあれこれ考えたわけではなかった。

 それよりも、ラスト、主人公が叫ぶ言葉たちがつらかったので。。。

 もうひとつの弱点、というか、自分にとってはこうあって欲しかった、という勝手な願望、要望としては。。。
 最後の最後、まだまだこの主人公には、簡単には向日的にはなってほしくない。簡単に、カーテンを開けようとはなってほしくはない。
 もしかしたら、少しくらいなら、カーテンを開けてみてもいいかもしれない。。。
 そのくらいの。。。
 なぜって。。。

 

乙一「きみにしか聞こえない CALLING YOU」

私にはケイタイがない。友達が、いないから。でも本当は憧れてる。いつも友達とつながっている、幸福なクラスメイトたちに。「私はひとりぼっちなんだ」と確信する冬の日、とりとめなく空想をめぐらせていた、その時。美しい音が私の心に流れだした。それは世界のどこかで、私と同じさみしさを抱える少年からのSOSだった…。(「Calling You」)誰にもある一瞬の切実な想いを鮮やかに切りとる"切なさの達人"乙一。
「CALLING YOU」、「傷――KIZ/KIDS――」、「華歌」収録


 「CALLING YOU」は、あらすじ紹介欄では「表題作」となっているけれども、目次その他では「きみにしか聞こえない」という表題ではなく、「Calling You」とのみ書いてある。してみると、もしかすると、「きみにしか聞こえない」というのは収録された三編の『通しタイトル』、もしくは『テーマ』と思うべき、あるいは、思ってもいい、ものなのかもしれない。もしかしたら。

 この「Calling You」は、またひとつの、「時をかける少女」の物語だ。いや、かけてはいないのだけれど、「時」をテーマとした物語だ。いつもの、よくある、あれ。だけれども、よくある分際で、なぜかいつもキリキリさせてくれる、あの。
 この物語は、なんだかすごく、映像化してみたくなってしまう。アニメではなく、大林宣彦調の、つまり、あの原田知世の時かけのときのような。そんな感じで。クライマックスの、「事故」の瞬間に向けて、少年と少女が近づいていく、その部分を、この小説のように「現在」の視点だけではなくて、「現在」と、「その時」の、両方を画面でカットバックでも何でもいいけれど、視てみたい!
 「……違う!」「あれはきみじゃない」
 。。。どうしてこんなに、キリキリくるのだろう。。。

 「傷――KIZ/KIDS――」は、さらにSFマインドの強くなってきた作品。「Calling You」もそうなのだけれど、もっと長く書くのも可能なはずの作品なのだけど、乙一の場合、なんだか本当に最小限度、必要不可欠で出来上がっている気がする。カットできる部分がない。
 印象的なのは、「シホ」がものの見事に「戻らない」こと。。。そして、にもかかわらず、それを絶望の理由にもせず、当然「戻る」ことをして希望への理由付けにもしていない点。そういう点もまた、最小限度、必要不可欠なパーツのみでできていて、なのに、無機的でないこと。このあたりが、乙一の「秘訣」なのかもしれない、などとも無闇に思う。
 「あの時、オレに傷を分けてくれてありがとう。」
 この物語は、「寸景」だ。
 まだ、きっと続く。
 けれど、それを、催促しようとは、思わない。

 さて、「華歌」。いろいろ痛いところがあったので、そして、それを語ることはやめておこうと思うので、語らない。
 ただ、いきなり叙述トリックだったのにはビックリした。なるほど、このいやに古めかしいようなヘンテコな文体はそのためだったのか。
 けれど、この物語で、このトリックが必要だったのかどうかは不明。ただ、思わず最初からイラストを見直しちゃったけど。

きみにしか聞こえない

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