楳図かずお「闇のアルバム」

楳図かずおの傑作短編集。朝日ソノラマの「楳図かずお恐怖文庫」では、第4巻に収録されている。同時に『本』『ダリの男』の2短編も収録。

 『闇のアルバム』は、「その20 隣の女」を除いて全てのページが基本的に1ページ1コマで、全24話の短編集。
どれも非常にインパクトのある作品だが、「その1 洞穴の女」辺りは、まだ最初ということで、「怪奇な絵で怖がらせよう」という感じかも。本領発揮かと見えてくるのは「その4 しあわせの日々」くらいからか。絵自体のショッキングなインパクト(「その1 洞穴の女」のようなスプラッターはもはや無い)と、これまたショッキングなアイデア、感服するしかない。

 忘れられないのは、シンプルなアイデアとハッとする絵の「その5 縄」、いつまでも不気味な「その11 蛾」、不思議と切ない「その12 背後の影」、最後のひとコマでのけぞらせる「その13 見知らぬ女」「その18 再会」など。

 が、一番「うワーッ」と思ったのは、「その21 発作」で、これ、例えばストーリーというかプロットというかを、仮に口で幾ら臨場感タップリに話しても無駄だと思う。他の作品はなんとかアイデアやオチで「へー」と思わせられるかもしれないけれど、この「発作」だけは、とにかく最後の最後の1ページ、即ちひとコマの「画力」、これに尽きるから。

 小説に文体があるように、コミックには画力がある。楳図かずおは怪奇漫画家と言われるが、その本領はたぶんは心理ホラー&ミステリ作家なのだ。画力タップリの。。。


楳図かずお「闇のアルバム」



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楳図かずお「おろち」

時を超えて幾人もの人生の語り部として登場する謎の美少女おろち。彼女の目線を通して、様々な形の人間ドラマを描く。ホラー、ミステリー、サスペンス等を兼ね備えたオムニバス作品。

 神聖なもの、美しいもの、素晴らしいもの、純粋なもの、、、そういったものたちを愛し、憧れ、崇敬の気持ちを持つのと同時に、しかしどうして、そうしたものたちが穢され、堕落させられるのを見たとき、異常な興奮を感じてしまうことがあるのか?
自分がどうしてもそうした素晴らしい存在になり得なかったことからくる、反撥、妬み、それ見たことかという溜飲の下がる思いがそうさせるのか?
だがそれで説明の付くものでもない。神聖なものが穢され、下劣な存在に貶められる変質的な文章を読んだとき感じることのある異様な興奮は、決して溜飲が下がるといった程度のレベルのものではない。
「聖なるものの堕落」に『興奮』を感じるというのは、何もエロティックな、性的な堕落、淫らさを見せるということに限るわけではない。
 楳図かずおという怪奇・恐怖マンガで有名な人がいるけれども、この人の、少なくとも或る時期以降のマンガは、絵的な恐がらせさよりも、ドラマや心理描写の物凄さに真骨頂があった。
 有名な「漂流教室」にしても、単に怪虫や未来人などの怪奇なシーンだけで今に至るまで傑作として読み続けられているはずがない。
 この作家の、私の最も支持する作品が「おろち」という連作シリーズだ。おろちというのは、連作に登場する美少女の名前で(!)、様々なドラマが発生するとき、あるいはその傍観者として、あるいはかすかな接触者として、あるいは触媒として、機能する。
 この「おろち」の最終エピソードが、私を特に惹きつけるのは、それがやはり「聖なるものの崩壊」エピソードだからだ。
 楳図作品にはミステリ的要素が多い場合があるので、あまりネタバレはしたくないのだが、あえて書いてしまう。
 このエピソードでは、或る犯罪が描かれるのだが、その真犯人は、作中「なんと神々しい」「優しく気高い」というように形容され続けた老女なのだ。
 そういうネタだけなら、ミステリにはむしろよくある話だ。「一番疑わしくないヤツが犯人」という決まり文句すら在る。
 しかし、この作品では、最後、この「神々しい」「気高い」彼女は、『ブタよりも卑しい』と罵られ、『最後まで口汚くわめきながら』のように描写されるに至る。その部分で、実は私はほとんど性的なほどの興奮をすら感じた。
 相手は何しろ老女なのだから、それを対象としての、本当に性的な興奮なわけではない。ここでは、やはり、「神聖なものの崩壊」に対して、私は興奮し、それが性的な感覚をも惹起しているのだろう。
 なぜそうなのか。どうして神聖なものの崩壊にそこまで感じなければならないのか。これはわからないことだ。

 凄い心理ミステリとか、SFとか、この「おろち」にはいろいろな要素が山盛り。でも絵がこわいから本棚に置けない(笑)


楳図かずお「おろち」


楳図かずお「愛の奇蹟」

 昔子どもの頃読んで、印象に残ってる短編作品が楳図かずおには多くて。。。
 特に、ぜひもう一度読みたかったのが、「愛の奇跡」って短編で。。。

 すごく印象に残ってて。ベタな他愛ない話だってことは、子どもの頃にもわかってたんだけど。。。それでも、印象に残ってて。

「奇跡は……それを信じるものにだけ起きる……」
という出だしで。

 ストーリーは単純。手元にはないから、あまり正確ではないけれど、少し再現してみましょう。

 恋人同士がいて、まだ若い青年少女の夫婦になって。
 毎日、ご近所から「ママゴトみたいね(^^)」と言われるような、可愛らしい夫婦生活をしていて。
 毎日、おさな妻は、ごはんの用意をしてコーヒーを入れて、彼の帰りを待っている。。。
 ところがある日。
 彼は雪山で、彼女に摘んでいってあげようと花を採りに行って、「あっ!」と転落。
 帰らなかった。。。
 「可哀想に。。。」と言われながら、彼女は泣き、それでも、毎日、彼がいた頃と同じように、ごはんを作り、コーヒーを入れて、彼の帰りを待っていた。。。
 何日も、何ヶ月も。。。
 そのうち、最初は「可哀想に」と言っていたご近所の人たちも、彼女のことを「気味が悪い。。。」と言うように。。。
 そして、何年も、何十年も。。。
 彼女は同じようにごはんを作り、コーヒーを入れて。。。
 ある日、彼女は鏡を見ていて、自分の顔にしわが寄ってきているのに気づき。。
 「こわい……!」と、自分が年をとっていくことを恐怖する。
 それでも、やはりごはんを作り、コーヒーを入れて。。。
 彼女はすでに可愛らしいおさな妻ではなく、白髪でしわの寄ったおばあさんに。。。
 そんなある日。。。
 雪山で、カチンカチンに凍った若者の姿が発見。。。
 遭難死体だ。。。と掘り出され、運ばれるさいちゅう。。。
 蘇生!
 「死体が生きかえった!」と混乱の中、彼は逃げ出す。「帰らなければ……」と、混乱した記憶の中、どこに、なぜ帰らなければならないのかもよく分からなくなりながら、「帰らなければ……」とさまよう。
 町は、彼の生きていた頃とはまるで変わり、知った場所も人たちもいない。。。
 それでも彼は、「帰らなければ……」と思いながらさまよう。。。
 そして。
 ある日、彼は、見知らぬ世界の中、ただ1つ、見知った、全く変わりのない場所を見つける。
 そこは彼の家。周囲が近代化され、変わり果てた中、ただ1つ何も変わることなくそのままにあった、彼の妻の住む彼の家。
 それを見た途端、彼の記憶は甦る。そうだ、俺はここに帰らなければならなかったのだ! 妻の加枝がここで待っているのだ! 加枝のところに帰らなければならなかったのだ!
 「加枝!」
 彼は家の古びた戸口に行く。
 ごはんの匂い、コーヒーの匂い、何一つ変わらない。彼の家で、彼の加枝が待っているのだ。
 「加枝!」
 加枝「あっ!」
 加枝「帰って来た! やっぱり、あの人は帰ってきた!」
 白髪でシワまみれの加枝は立ち上がり、戸口に行く。
 加枝「あっ!」
 戸口から覗けた彼の若い姿。
 加枝はよろける。あの人は若い昔のままの姿で帰ってきた。
 私は。。。
 こんな私の姿を見られたくない。
 「加枝!どうしたんだ、開けてくれ!」
 「か、加枝ではありません!」
 「加枝、何を言うんだ!その声は加枝だ。やはりそこにいたんだ!」
 「加枝!」
 加枝は必死に戸を押さえる。
 「加枝!」
 彼は戸を押しあける。
 「加枝!」
 「加枝!」
 。。。。。。。。。
 そこには。。。
 愛らしい少女のままの加枝がいる。
 「加枝!」
 そして。。。
 最初の言葉が再び繰り返される。
 「奇跡は……それを信じるものにのみ起きる……」
 。。。

 こうして文章にするとアレかもしれないけど、絵の力もあって、僕は(笑)
 ラストも読めちゃうし、ありきたりなんだけど(笑) 感情の盛り上がりがすごいから、泣けちゃう(笑)
 何か僕の琴線に触れるものがあるらしいです(笑)


楳図かずお「愛の奇蹟」

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