アガサ・クリスティ「忘られぬ死」

 フロアショーのライトが消え、ふたたび明るくなったとき、ローズマリーは死んでいた─誰からも愛されていたローズマリーが、自分の誕生パーティーの席上で突如毒をあおって世を去ってから、やがて一年が過ぎようとしていた。
 が、夫のジョージは疑惑をぬぐいきれなかった。
 万霊節の夜、同じ場所、同じメンバーによるパーティをー催したが、そこで新たな悲劇が! 鮮やかなトリックが冴える女史中期の秀作。



 前半が非常に面白かった。このままなら、これは保存版だ……という感じだったのだが、後半、「捜査」が中心になり、一気に魅力が減じた。捜査官たちの魅力がどうこうというより、前半のままに事件の渦中にあるキャラクターたちの感情を読んでいきたかったのだ。
 その点では、同時期に発表されていたらしい「ホロー荘の殺人」のほうがよかったように覚えているのだが、それとも、それは「ホロー荘……」の探偵役がポアロだったためだろうか。クリスティ本人は、「ポアロを出すんじゃなかった、邪魔だった」という意味の反省をしていたようだが……

 時代をパソコンとケータイのある現代に移した映像版を観たが、こちらは回想の殺人ではなく、さらに探偵役が最初から出ずっぱりで、さらにキャラクターたちの性格も全然違うという、まるで日本の2時間サスペンスのような出来で、悲しかった。トリックを観たいんじゃなくて、このキャラクターたちの物語を観たかったのになあ。

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アガサ・クリスティ「暗い抱擁」

気品のある美しい女性イザベラには、少女の時から親しくしていた婚約者ルパートがいた。家柄がよくハンサムで優しいルパートは、彼女にふさわしい相手だと誰もが認めていた。しかし、冷酷で利己的な野心家ゲイブリエルが現われた日から、彼女の心に変化が起き始めた。やがてイザベラは思いもよらぬ行動にはしる。彼女の心にあったものは……。クリスティーがキリスト教的至上の愛をテーマに描く、愛の小説シリーズ第4弾。

↑上に引用した、これのカバー裏の「あらすじ」ほど「全く内容を正しく伝えておらず、それどころか大きく内容を誤解させるもの」はほとんど初めて見た。。。(^^;
 カバー裏のあらすじを読んだ限りでは、なんだかハーレクインロマンスみたいで。。。
 もっとも、この「あらすじ」を書いた編集者はそう誤解させ、読者に買う気を起こさせるためにわざととんでもないこの文章をものしたのかもしれない。。。(^^;
 この作品の実質は。。。やはり、「愛の重さ」や「春にして君を離れ」同様、非常に、非常に重たいものだった。。。

 私は時折、自分をオセロになぞらえてしまった。。。そして、「加害者」イアーゴを責めてしまった。。。
 私はオセロ。では、イアーゴは誰。。。? と。
 私は被害者。では、加害者は誰。。。? と。
 口先で加害者を標榜しながら、そうして逃げ口上と責め先を求めてしまって。
 けれども、ここではイアーゴ(イヤゴーと表記してあるけれど、私は慣れ親しんだイアーゴと表記してしまう。。。)の悲しみが書かれてしまうのだ。。。 けして、加害者として弾劾できるものではないのだと。。。
 けれど、読みながら、それでも。どうしても、自分の方を「正当に」かばってしまう自分も発見できてしまう。。
 だから、この本もまた読み返すのはつらいのだ。。。
 そして、そんな本だからこそ、自分にとって大切な本なのだと思うことにしよう。。。

 オセロとイアーゴのことを私に教えてくれたのは、そもそもアガサ・クリスティのポアロ最後の事件「カーテン」だった。
 ポアロの最後の言葉を、今、口にすることを許してほしい。
 「私にはわからない」。。。
 私には。
 わからない。。。

アガサ・クリスティ「ホロー荘の殺人」

アンカテル卿の午餐に招かれたポアロは、少なからず不快になった。邸のプールの端で一人の男が血を流し、傍らにピストルを手にした女が虚ろな表情で立っていたのだ。が、それは風変わりな歓迎の芝居でもゲームでもなく、本物の殺人事件だった!恋愛心理の奥底に踏み込みながら、ポアロは創造的な犯人に挑む。

特にすごいトリックがあるわけでも。。。特にすごい物語があるわけでも。。。特に。。。
特に何がというミステリではないのだけれど。。。

そして、初めてこれを読んだ頃の私は、ほとんどサプライズ・エンディング至上主義だったので、普通なら、このミステリについては、「特に気にかけるところ無し」のフォルダに入れて忘れてしまっているはずなのに。。。
なぜか、不思議と頭に残ってしまっていたのだった。。。

そして、今、読み返してみて、解説にもあるように、つまりはこれはクリスティの「普通小説」だったのだろうと。。。

29章最後のポアロのセリフがとても印象的だったので、最初、これで幕かなと思ったら、次の章があったので、これは蛇足じゃないかなどと思いながら読み進んだ。
そして。
ヘンリエッタの、クラブトリー婆さんへの言葉で、不覚にも泣けてしまいそうになったのは不思議なことで。。。

なぜなのか、分析してしまうのは、きっと意味がないことなのだろう。。。

アガサ・クリスティ「パーカー・パインの事件簿」

頭のはげた品のよい英国紳士の私立探偵、パーカー・パインが開いている身の上相談所を訪れた人たちの物語。巧みな話術で読者の興味を終始そらさない推理小説。

久しぶりに再読してみて、連作の2つめで、いきなり都筑道夫の片岡直次郎シリーズを思い出した。今まで考えもしなかったけれど、直次郎のファースト・エイド・エージェンシーって、あれ、パーカー・パインだったんだあ(笑)。
 ポアロものは、長編がよいけど、このパーカー・パインの短編シリーズは意外に飽きない。

 ただ、再読してみて思ったのは、前半の「悩み事解決業」のときのほうが面白いこと(笑)。極端に言えば、「スパイ大作戦」みたいなもので、何か仕組んでいるのは確かだけれど、どういうふうに展開されるのか、と素直に楽しい。
 これが、後半の「犯罪解決もの」になると、それなら別にパーカー・パインでなくて、ポアロでもミス・マープルでもいいじゃない? となってしまう。
 せめて、「統計」で解決するという手口なら、他の探偵たちとの差別化も際立ったんだけど。。。
 なお、ハヤカワ文庫版には収録されていないらしい最後のエピソードは、これは高木彬光の「妖婦の宿」ですね。

アガサ・クリスティ「愛の旋律」

感受性が強いヴァーノンと男まさりの活発さが長所のジョーはいとこ同志で子供の頃から仲がよかった。ヴァーノンの家の隣に引っ越して来たユダヤ人家族の息子セバスチャンと幼な友達のネルを含めた四人は大人達の世界を垣間見ながら様々な体験をする。いつしか音楽に目覚めたヴァーノンはネルへの愛情を持ちながらも歌手ジェーンにあこがれていく。第一次世界大戦を挟んだ時代を四人はそれぞれの道を歩いて行く。

 このタイトルもハークレイン・ロマンスとしか思えない。。。。(^^;
 とはいえ、「愛」を男女間のロマンス的なもののみと感じてしまうのがいけないのだろうけれど。。。
 これの解説では、ネルのことを打算的な云々と書いてあるけれど、私には、むしろとても普通の、そしていじらしい女性に読めてしまった。。。
 この本の感想は、いろいろな人に聞いてみたい気もする。。。

「あなたの前に立ちふさがっているものは、あなたの後ろにいるもののように恐ろしくないのよ。このことをよく覚えていらっしゃい。後ろのものは目に見えないから恐ろしいの。まわれ右をして物事に立ち向うほうが、逃げようかどうしようかとぐずぐずためらっているよりずっといいわ。」
 ただただひっそりと身を沈めている私にとっても、それはその通りなのかもしれない。。。

愛の旋律 ( 著者: アガサ・クリスティ / 中村妙子 | 出版社: 早川書房 )

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