歌野晶午「舞田ひとみ11歳、ダンスときどき探偵」

舞田歳三は浜倉中央署の刑事だ。仕事帰りに兄・理一の家によって、小学五年生になる姪のひとみの相手をし、ビールを飲むのを楽しみにしている。難事件の捜査の合間を縫ってひとみをかわいがる歳三だが、彼女のふとした言動が事件解決のヒントになったりもして…。多彩な作風で知られる歌野晶午が、ちょっと生意気でかわいらしい少女と、本格ミステリらしい難事件を巧みに描く。刑事×難事件×おしゃまな11歳=歌野晶午流「ゆるミス」。軽やかに登場。

【目次】
黒こげおばあさん、殺したのはだあれ?/金、銀、ダイヤモンド、ザックザク/いいおじさん、わるいおじさん/いいおじさん?わるいおじさん?/トカゲは見ていた知っていた/そのひとみに映るもの


 タイトルには偽りあり。決して、舞田ひとみ、11歳が、名探偵役なわけではない。
 探偵役は、彼女の叔父の刑事である。この刑事には、特段の個性付けは見られない。また、連作の1つ1つの事件にも、それほどの不可解性等はない(尤も、「なぜ?」興味は割りとそそられるところはある)。

 ミステリとして決して不出来ではなく、よい出来なのだが、小説としては探偵役に魅力がなく云々……と言いたくなり、もしこれがシリーズものなら次は読まないかもというところ……のはずなのだが、意外に面白いのは、探偵役でもなく、第1話はともかくサジェスチョンを与える役回りとも必ずしも言えない「舞田ひとみ、11歳」なのだ。その意味では、このタイトルは後半はともかく、かなり「かくあるべき」タイトルだったかもしれない。

 そして、やはりその舞田ひとみに係る全体を通しての1つの伏線には、せっせと前のページを読み返すことになった。
 面白いミステリを読んだなあと、感慨をもって読み終えることができたのだ。
 やはり歌野晶午の1冊ものはヒット率が高い。

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歌野晶午「葉桜の季節に君を想うということ」

ひょんなことから霊感商法事件に巻き込まれた「何でもやってやろう屋」探偵・成瀬将虎。恋愛あり、活劇ありの物語の行方は? そして炸裂する本格魂!

 これは驚いた!
 いやー、先んじて、どこぞのサイトで「信用ならない語り手」みたいな意味のことを読んでしまい、おかげで眉に唾をつけながら読んでいったのだが、そんな唾に効き目はなかった(笑)。
 そしてまた、どこぞの(最前のとは別だったかもしれない)サイトで「一人称の小説で、語り手が読者を騙すのは、その理由が無いのだからアンフェアだ」みたいな意味の感想文を読んでしまい、「そうかな? とりあえず、たとえばアガサ・クリスティ「アクロイド殺し」では、基本的には犯人はポアロを騙すつもりの手記としてあれを書いたのだそうだし、辻真先「仮題・中学殺人事件」では、とにもかくにもあれでなければ「読者が犯人」(注・これはネタバレではありません)にならなかったのだから、書きようによっては一人称の「語り手」が読者を騙す形になっていても、アンフェアではないのではないか。ここはひとつ、己が目で確かめてみるか」などと挑戦心を燃やし、読んでしまった。
 むーん、しっかりつばが乾ききってしまった。こう来るとは思わなかった。むしろ、先走って「信用できない語り手」みたいな情報を得てしまったので、さてはこの語り手こそ悪い奴か、みたいに微妙に思ってしまったので、「葉桜の季節に君を想うということ」という抒情的なタイトルに胡散臭さを感じてしまった。ところが、どんでん。このタイトルはこのタイトルの意味があるわけなのだった。そして、もちろんこの小説の叙述トリックのネタは、思いきり西澤保彦の「神のロジック人間のマ○ック」や殊能将之の「鏡の中は日曜日」とかぶってしまうのだが、自分自身で思い込んでいるとか、知性の衰退とか、そういうことではなく、むしろ、最も自然な叙述トリックになっているのではないかと、逆説的かもしれないが思ってしまう。そして、つい「補遺」の部分を先に読んでしまったにもかかわらず、全然気づけなかった自分に脱帽←脱帽の意味が違うって。勘の鋭い人は、というか、たいていの人は私より勘が鋭いので、「補遺」を先に読んじゃわないようにしたほうがよろしいよー。
 ダブルミーニングに乾杯。ぜひ、もう一度読み返したい。

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