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幻魔大戦deepトルテック

最後の最後でなんとも言えない感慨が。

最初の、「少女のセクソロジー」がなんとも読みづらく……というより、ベクトル感覚がまるでやってきてくれず、この文体はなんなんだろう、と思ってしまった。「deep」のみちる編も決してこんな感じではなかったのだが。シナリオ調とは違うのだが、感情移入が分断されてしまう。これがトルテック感覚か?

それが、いよいよ本編に入ってから、おや、これは、この“ねちっこさ”は平井和正じゃないか、と寧ろ驚きを感じたくらいだった。主人公達の心情が綿密に描写され、重みを持つ。主人公が校長先生というのが問題だが(笑)、しかし、なんだ、よかった、書けるじゃないですか、という感じだ。
それとは別に、全く別個の長編「アブダクション」のキャラクターが平然と登場し、そのまま「幻魔大戦」に関与している。この開き直りのような強さはなんなのか。もっとも、deepの時点で青鹿晶子の名を持つ女性が登場している時点で、一つの兆候はあったのかもしれない。

前作deepと比べて全く異なっていたのが、この開き直りとも言うべき大盤振る舞いだった。「アブダクション」との融合のみならず、登場してくる……犬神明たち!
不死鳥作戦、神話人種と、まるごと「ウルフガイ・シリーズ」と「月光魔術團」まで持ち込みながら、しかし、そのアダルトウルフは神明ではなく、犬神明と名乗るのだ。そして、もう1人の若い犬神明と青鹿晶子。

思うのは……やはり、まずはこのアダルトウルフのことだ。彼は神明ではなく、なぜ犬神明なのか。
これは、やはり最後の集束だったからなのだろう。つまり、「人狼天使」の宇宙は閉鎖を受け、アダルト犬神明は世界を移したのだ。そして、神明に“上書き”した。そう思った。これこそが唯一の、アダルト犬神明の「続編」だったのだ。アダルト犬神明、ロボ。久しぶりだね。やっと安らげそうだね。

若き犬神明と青鹿晶子も再会を果たした。

不思議くん、ミスティー少年は最後まで、これは四騎忍に感じられて仕方なかった。口調や態度がそう思わせたのだ。そこをうっちゃって、幻魔司政官が登場するとは……今この場面で、よもや司政官が現れようとは。“彼”でも“奴”でもない、あの存在が。

だが、なにより平井和正らしいと思わせたのは、あの長大な「アブダクション」での唯一の成果だったかのような女呪術師集団の生成を、あっさりと「失敗だった」と片付けてしまう凄まじさだろう。GENKENを斬って捨てたのは、まだはるか過去の清算と言えるかもしれない。だが、「アブダクション」は同じトルテックシリーズの系列の直近の産物だ。しかし、平井和正にはすでにそれさえ「まだまだ……!」になってしまうのだ。
変わるぞ。平井和正。まだまだ変わるぞ。

そして……
ルナ王女もリア王女もいない世界で、ベアトリスの生誕しない世界で、ムーンライトでなくサンシャインのいる世界で、シレーヌ王女の世界で、ひっそりと、“光のネットワーク”ではない個人の力で、あっさりと幻魔大戦は終幕を迎える。

戦争芸術家、幻魔司政官シグは、封印され、“大連盟”もサイボーグ戦士もエスパー戦団も必要とされず、幻魔と戦うことはそれ自体が幻魔と化すことという丈の言葉と共に、もはや光のネットワークという青春は思い出の中にのみ留められる。
もはや、幻魔は脅威ではないのだ。

GENKENの趨勢も、犬の帝国の行き先も、CRAの活躍も、すべては懐古される思い出となった。仮に語り続けられるとしても、それは未来の分からない物語ではなく、昔話として静かに語られることとなるだろう。寓話として、穏やかな中で。

幻魔大戦がこれほど静かに、穏やかに、何もかもを纏めて終わるときが来るとは、どうやって想像することができただろうか。あまりに巨大な物語、あまりに巨大なテーマを、どうやって……

しかし、代表者同士の一つの決着が、これほど完璧な幻魔大戦の終わりを見せようとは。そして、その代表者は、片や原初の司政官であり、片や最新参の少女だったのだ。

トルテックという存在の本質、“非情”、“人格のない”ということは、いったい受けいれていいものなのかどうか、わからない。けれど、いま敢えて受け入れてみることも、考え込んでしまうこともないのだろう。時間がない、時間がない、時間がない……という幻魔大戦、ハルマゲドンは終わったのだ。

ウルフガイもアダルトウルフガイもアブダクションも、そして幻魔大戦が、終わったのだ。

しかし、この平井和正が最後の1匹とは思えない。
かならずまた、お目にかかろう。
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コミック版「幻魔大戦」

今月、なぜかいきなり、最初のコミック版「幻魔大戦」が全1巻にまとめられて秋田文庫から刊行されました。思わず迷うことなく買っちまいましたよ(笑)。これまでのコミックスでは未収録だった2ページ程度が入っているし、平井さんの数百字程度ではあるけれどもコメントつきだということで。

手にとってみると、従来のコミックスだと2冊(文庫だと3冊)だったものが1冊になっているので、なかなか分厚め。そして、背表紙の「幻魔大戦」というタイトルを見ていると、何とも言えない感慨が……。

ここが始まりだったんだなあ……本当に。本当に。

ざっと斜めに内容を見返していくと、ところどころやっぱり感動を誘う部分がある。シグが記憶よりおじさんだったけど(笑)。
絵柄の古さは否めないまでも、面白さは紛れもない作品だったと思う。贔屓目かもしれないけれど。

幻魔大戦deep

平井和正の「幻魔大戦」シリーズは複雑怪奇な構成を持っている。

すべては、石森章太郎との合作である「幻魔大戦」というコミックから始まっている。
1964年を舞台に、主人公の超能力者である高校生・東丈を中心として、姉・東ミチ子、弟・東卓、親友・矢頭四郎、恋人となるプリンセス=ルーナ、異星のサイボーグ戦士ベガ、異星の超能力者フロイ、黒人幼児サンボ、裏切り者ドク=タイガー、幻魔サメディ、幻魔ゾンビー、幻魔司政官シグといった秀逸なキャラクターたちが登場したこの壮大なSFコミックは、月が地球に落下してくる破滅のイメージと共に未完のまま打ち切られた。

そして、世界を遡り、時代を下った別の宇宙で、タイトルは「新・幻魔大戦」として、コミック版「幻魔大戦」の世界を生み出すため、すでに幻魔によって滅ぼされた地球から時代を超えて「救世主を生み出す」物語を紡ぐヒロイン、お時が登場した。ここでは、プリンセス=ルーナの娘、ベアトリス王女が、その超絶的な能力によって江戸時代の娘お蝶と、エド・シティ1999年の香川千波とを精神融合させ、お時を生み出し、やがてこのお時が愛する山本千之介こそが東丈の系譜を生み出していく。同時に、おみちと由井正雪のつながり、そして正雪と丈の関係、犬神の一族・月影の存在と、この「新・幻魔大戦」こそが、のちの幻魔大戦の魂と血の流れの根源を形作っている。

やがて、本格的に再開された幻魔シリーズは「真・幻魔大戦」と題され、30代になったSF作家で超能力研究家の東丈、姉・東三千子、弟・東卓、ルナ姫、ベガ、宇宙意識フロイ、黒人青年ソニー・リンクス、変質者ドクター=レオナード・タイガーマン等のコミック版からバージョンアップされたキャラクターたちと共に、“ムーンライト”こと黒野千波=お時の存在など、胸を期待にはちきらせるばかりの布陣でスタートした。そして、むしろ彼らオールド・キャラクターたちより物語の中で先に登場した新キャラクターたち、テレパシストのジョージ・ドナー、ルナ姫の妹・リア姫らも魅力的で、一度物語の表から姿を消した彼らが、やがて丈らと接点を持つパートに入ると、物語は否応なしに盛りあがったものだ。
この「真・幻魔大戦」は、しかし、ちょうどその部分で突如として第二部に移行し、丈の秘書・杉村優里をヒロインとして、別の物語としてスタートしていく。

「真・幻魔大戦」と並行して書きこまれていったのが、コミック版のリライトを意図した当時角川文庫から発刊された「幻魔大戦」である。これは、第三巻までは概ねコミック版のリライトになり、東丈、三千子、卓の姉弟と、ルナ姫、ベガ、ソニー・リンクス、宇宙意識フロイと、「真・幻魔大戦」でのバージョンアップしたキャラクターでコミック版をリライトした形となっていた。江田四郎、幻魔ザメディ、幻魔ザンビとしてリライトされた他のキャラクターたちの動きも概ねコミック版を踏襲している。
第三巻で幻魔ザメディをニューヨークでとりあえず退けた後、「真・幻魔大戦」で登場した“クェーサー”という企業が登場したあたりから、小説版「幻魔大戦」はコミック版から道を外していく。そして、ついに第四巻から、東丈は独自の“救世主への道”を歩み出していくのだ。そこから登場してくる、久保陽子、平山圭子、田崎宏、井沢郁江、河合康夫、木村市枝、木村明雄、杉村由紀、高鳥慶輔らといったキャラクターたちは、おそらく読者たちの心に今もなお道を模索しながら生きつづけたままだ。
この「幻魔大戦」の動きが、そのまま「真・幻魔大戦」にも影響し、杉村優里は母・杉村由紀の記憶を受け継ぎ、GENKENの仲間達と再会する。そして、犬神・月影の復活から優里とお時の“超霊媒”融合、時をかけるクロノスから、由井正雪以前の丈、役行者・小角の登場に至るまで、時と次元を越えて「幻魔宇宙」が拡がりを見せる。その結果、クロノスからアポロ=丈までが登場し、やがて、小説「幻魔大戦」は「ハルマゲドン」「ハルマゲドンの少女」という一種別の形でのみ終結を向かえた……

コミック版「幻魔大戦」未完
「新・幻魔大戦」全1巻
「真・幻魔大戦」第一部~第三部 未完
小説版「幻魔大戦」全二十巻
「ハルマゲドン」
「ハルマゲドンの少女」第一部~第三部
これらが基本的な“幻魔大戦”シリーズとなる。


そして、それからひどく長い年月が過ぎ、「幻魔大戦deep」が生まれたのだ。

この「deep」は即ち「深・幻魔大戦」ということだろうが、再読を始めてみると、初めて読んだときほど東丈の描写やそもそもの文体に違和感がないのに気づいた。もっと「アブダクション」のような(つまりは「地球樹の女神」以降のか?)平井和正の「軽み」の部分が前面に出て、重みの部分は見えづらい、あっても続かない、文体になっており、東丈のキャラクターが直哉もどきになっている記憶があったのだ。
だが、ちょうど同時並行して「真幻魔大戦」を再読していたのだが、さほどの相違は感じられない読み始めだったのだ。

それが、一気に「アブダクション」度を加速したのは、“すてきなお母さん”雛崎みゆきが登場してからになる。彼女の登場以降、丈のキャラクターも世界の描写も「アブダクション」に“憑依”されていく。

が、にも関わらず、では雛崎みゆきというキャラクターがそれほどの圧倒的な存在感を持っていたかといえば……これは決してそうではないのだ。登場当初はそれなりの平井和正の女性キャラクターとしての魅力を備えているかに見える……が、振り子を丈に伝授することのみが役目であり、それが終わればもはや使命を果たしたかのごとく、急速に存在感を喪失していく。いてもいなくてもいい存在としか思われないのだ。(その証拠のように、続く「幻魔大戦deepトルテック」では消失している!)

この「deep」において、新しく登場した重要な女性キャラクターの中でも、雛崎みゆきほど重要であり、そして同時に存在意義のなかったキャラクターはほかにはいない。丈にとってすらも、最速で美叡(&美恵)や雛崎みちるに比べて、みゆきが占める割合はみるみるうちに失われていったのではなかったか。

平井和正作品の魅力のひとつには、確かに女性キャラクターの備える“女神性”があったはずだ。ところが、この「deep」で登場した女性キャラクターたちはいずれもかつての魅力に欠けている。東美恵たちなど、「真幻魔大戦」時の養女時代の愛らしさはどこへやら、といって虎4や杉村優里のようなパワフルな魅力を備えているわけでもなくという、どうにも感情移入する魅力の乏しい女性陣だったのだ。

「真幻魔大戦」登場時の美恵は、「東美恵子」だったはずで、それが“夢魔の寝室”編あたりから「美恵」になっているので、その辺ですでに世界が変わっていたのかも? 「美恵子」のままだったら、また違ったのかな? ……この辺は余談中の余談である。

丈のくだけた口調は、べらんめえ部分はともかく、GENKEN主催になる前の少年の丈にはちゃんと存在していたものなので、それほど違和感はない。それよりも、フロイのような“宇宙意識”とインフィニティたる“宇宙意志”はどう違うのか、振り子はコックリさんとは違うのか、そんな細かいあたりが気になってしまうところはある。

GENKEN時代の丈の失踪が、ついに逃避だったと断定されてしまったが、これはつらいところではあるかもしれない。
けれど、GENKENを作らないでいた丈のまわりにやはり久保陽子や平山圭子もいたようだ。彼女たちと一緒に、“非・GENKEN”の丈はいったいどう活動しようとしていたのか。その物語も興味が湧いてしまう。オヤブンでもなく、東丈先生でもない丈は、はたしてどう幻魔大戦に関わっていったのか。

そして……GENKEN世界の延長でありながら、ハルマゲドンの少女にはつながらなかったらしい世界の木村市枝は、「砲台山」の時同様、やはりあくまで木村市枝だった。それがやはり、純粋に嬉しいのが、どの読者にも共通のことではないだろうか。

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