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貫井徳郎「空白の叫び」

頭脳、容姿、経済、すべてに恵まれた葛城拓馬、腕力に秀で他者の干渉を拒む久藤美也、父を知らず祖母と叔母に育てられたおとなしい神原尚彦。ふつうの少年がなぜ人を殺すのか。世の中への違和感を抱える彼らは、何を思い、どんな行動に出るのか…。やがて殺人者になる3人の中学生の心の軌跡を克明に辿りながら描く、戦慄のクライム・ノベル。

第1部胎動・第2部接触・第3部発動と分かれている。イデオンですか、というのはさておき、第1部は個人的に非常に面白かった。それが第2部以降、面白いことは面白いのだが別種のもの、そして個人的には面白さの量も減じてしまっていたのが残念だ。
もちろん、個人的なことであり、読み手によって異なる感じ方だろう。

では、全編を第1部にしてしまい、3人の主人公がそれぞれ「殺人の門」を越えてしまったところで終わりにしていればよかったかといえば、そういう単純なことでないのも勿論なのだ。

貫井ミステリとしての叙述トリックも切れ味は大したレベルではない。

ただ、接触編から発動編に流れていく中、唯一微かにだがスリリングに感じられていたのは、神原についてなのだ。

作者としても、だからこそ神原のみを一人称で描いたのではないかとも思うのだが……。


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貫井徳郎「夜想」

「慟哭」から十四年。<絶望と救済>を描く、新たな傑作の誕生

事故で妻と娘をなくした雪籐の運命は、美少女・遥と出会って大きく動き始める。新興宗教をテーマに魂の絶望と救いを描く傑作長篇。


これは、貫井徳郎版の「幻魔大戦」なんだな、と思う。ミステリ版の、とは言えない。おそらく、ミステリ版の「幻魔大戦」があるとすれば、それは“教祖”の正体を解明する形を取るのが本道だろうと思うからだ。
意外な犯罪と一つの哀しい錯誤、これらミステリ的な興趣の部分は、この小説の読ませ処と連携してはいない。これらの仕掛けがなくとも、この小説は存在し得ただろうし、その点で、貫井徳郎版「必殺仕置人」であると同時にミステリ版のそれでもあり得た「殺人症候群」とは異なる。
その意味では、これは決して貫井徳郎のベスト作品の一つとは言えないだろう……でも、私には、面白かった。
貫井徳郎にとって「幻魔大戦」がどんな意味を持っていたのか、それは解らない。けれど、こうした形で“自分の幻魔大戦”を書いてみたのかな、くらいに思う。
そして……私も自分の幻魔大戦を抱えているのだ。書いてみることなど、もはやないとしても。

貫井徳郎「さよならの代わりに」

劇団“うさぎの眼”の看板女優が、上演中に控え室で殺害された。事件と前後して現れた、真犯人の存在をほのめかす謎の美少女。駆け出しの僕は、彼女と共に事件の真相を追い始める。彼女に振り回され、時折見せる曖昧な言動に戸惑いながらも、僕は、その不思議な魅力に次第に惹きつけられていく。しかし、彼女は、誰にも言えない秘密を隠していた―。

 貫井徳郎は「本格ミステリ」の書き手なので、一体この作品もミステリなのか、それとも本当に時間SFなのか、最後まで決定することできずに読み進んだ。ミステリならば巧妙な叙述トリックだろうし、SFならば結構の整った時間物だろう、とにかく貫井徳郎作品なのだからという安心感はある。

 このところ「時間」に関わりのある作品を続けて読んでいるように思う。乾くるみ「イニシエーション・ラブ」、蘇部健一「届かぬ想い」といったところ。前者は叙述ミステリだし、後者はタイム物だ。そして、前者は巧妙で、そして「うわー」という痛みもある小説であり、後者はタイトルやイラストやから予想・期待されたのとは正反対な「おい……」という不愉快さのある物件だった。
 そしてこの「さよならの代わりに」は、ところどころ叙述トリックの匂いをさせながら最後まで正統派の時間SFから逸脱することのなかった端正な小説だった。

 「神のふたつの貌」「殺人症候群」のようなずしりとくる代表作にはならないだろう。また、「慟哭」のような、いつまでも忘れられない印象はないかもしれない。けれども、きちんとした貫井徳郎の小説として、やはりちゃんと出来上がっていたよねと思う。「法則」については、やはり貫井徳郎らしいかっちりした構成だった。
 プロローグとエピローグについては、若干、違う造りの可能性もないではなかっただろうけれど。。。

さよならの代わりに

貫井徳郎「慟哭」

連続する幼女誘拐事件の捜査は行きづまり、捜査一課長は世論と警察内部の批判をうけて懊悩する。異例の昇進をした若手キャリアの課長をめぐり、警察内に不協和音が漂う一方、マスコミは彼の私生活に関心をよせる。こうした緊張下で事態は新しい方向へ!幼女殺人や怪しげな宗教の生態、現代の家族を題材に、人間の内奥の痛切な叫びを、鮮やかな構成と筆力で描破した本格長編。

初めて読んだ時は、それはそれは驚いて、「これは傑作」と確信した。それから10年ぶりに再読。今度は、仕掛けは判っているので、その「書き方」を楽しみながら読むことにした。
読んでいくと、どうして自分が10年前とても充実して読めたかが解ってくる。同時に、作者の仕掛け方も透けて見える。

読み終えてみて、10年前ほどには評価が高くはならないな、とは思った。けれど、作者自身に、「神のふたつの貌」「殺人症候群」といった、この処女作を超える傑作が生み出されているのだから、これは仕方ないことだろう。。。
貫井徳郎に脱帽。

なお、「殺人症候群」のところにトラックバックいただいた方は「慟哭」について書いておられて、そこに、

「つながりも無く、環境、登場人物の設定さえ明かされていない二つの物語の関連性を一から想像して読まなければならない。それをしなければ文字を追うだけになってしまう。それを楽しめる人はこの小説を、面白いと感じられるかもしれない。」

 と書いていらっしゃる。あまり面白いと感じられなかったのかな、と思ったのですが、どうだったんでしょう?

慟哭 ( 著者: 貫井徳郎 | 出版社: 東京創元社 )

貫井徳郎「殺人症候群」

捜査課が表立って動けない事件を処理する警視庁内の特殊チーム。リーダーの環敬吾は一見無関係と見える複数の殺人事件の繋がりを探すよう部下に命じる。一方、看護婦の和子は、事故に見せかけて若者の命を次々に奪っていた…。
「失踪症候群」「誘拐症候群」に続く、「症候群」シリーズ最終巻。


 「失踪症候群」「誘拐症候群」に続く三部作完結編。これは、警察に設けられたスパイ大作戦的チームを主人公メンバーにしたような連作なのだけど、前2作は、駄作ではないし面白いのだけど、特筆すべき感銘も驚きも私にはなかったので、実はよく覚えていない(笑)。

 けれど、この完結編は、前評判の「スパイ大作戦対必殺仕事人」「ハングマン対必殺」とかいう、あまりにもネタ的なものとは裏腹に、非常に面白かった。いや、紛れもなくスパイ大作戦対必殺仕事人だったのだけど(笑)、この作者の貫井徳郎がちゃんと本当に必殺者だった点が、この作品を必殺まがい物ではなく、しっかり「作品」として成立させていたんだろうと思う。

 一般ミステリファン(こんな言い方があるかどうかは知らぬ)にも、この作品は貫井徳郎作品としては割とメジャーで(TT)、『金で恨みを晴らす、まるで必殺仕事人みたいだけど、実はすごく重いテーマのミステリ』というふうに、必殺が実はすごく重いテーマとして観られるテレビ番組だ(だった)と思ってもらえてないと解る好評ぶりで(T.T)(T.T)。

 まあ、その辺の、前期必殺者としての愚痴はさておき、ミステリとして見たときも、さすがは貫井徳郎という仕掛けが施されていて、充分に堪能いたしました。

 実は、半年前に読んだものを今再読しかけているのですが、まんまと引っかかったネタについて今度は「うーん、うーん、なるほど、さすがだ」と再確認しながら読んでいるところ。

 時々、後期必殺で散見された「名セリフ」がわざとらしく模写されているのはご愛敬。

 特に前2作を読んでいなくても、これだけで楽しめるとは思いますです。

↓つづき

恨み、復讐、人が人を殺す、そういったことへの徹底した物語としては、この「殺人症候群」以上のものを今のところ知らない。刊行後、年に一度「殺人症候群」は読み返しているが、読み返せば読み返すほど、この小説の凄み、重み、悲しみをより一層感じさせられる。
 もう勘弁してくれ、というところもあるくらいだ。。。
 勘弁してほしいので、その辺りについては触れない。
 ミステリとしての部分について追加するなら、もっとも「騙し」のテクニックが発揮された或る人物の「正体」については、物凄く今さらながら、実は意外でもなんでもないはずだったのだと気付いた。なぜって、中村○水は仕○人に決まっていたのだから。。。
 3年目になってやっと「あー」と思ったんだから、バカみたいだね(笑)。(おっぺ)

「必殺仕事人」もIIIの中盤辺りからは一気に「あっけらかん」化に加速がかかり、もうナンも考えずにバラエティを見るように観ていられました。
 「必殺仕置人」が「悪の上前をはねる極悪」と山崎努らが自分たちを規定して始まりながら、「なんだかまともな人間になった気がする」などと気持ち良く思ってしまった直後崩壊し、続く「暗闇仕留人」では石坂浩二が難病の妻のために中村主水のスカウトにのって仕置人になりながら、途中それがために逆に妻を失い、最後には「俺たちのやってきたことで少しでも世の中良くなったか?」などと考え始めてしまい、「俺たちにやられた奴にだって家族や好きなやつがいたかもしれないんだ」と思いながら逆に殺されていく、、、そんなことを繰り返しながら、シリーズが重なるごとにテーマが重層的に増えていった。。。たぶんそれがいきなり限界になって、「新必殺仕事人」あたりからポキッと折れてバラエティ化してしまったのだと思うのですが。

上に書いたようなテーマの流れを、「殺人症候群」のストーリー、プロットと比べ合わせてもらえると、「あー」と感じられるものがあるかと(笑)
 ちなみに、倉持が接触してきたとき、仕置屋の女性が「お金を貰わなければただの人殺しよ」と言って「なんだそりゃ、金を貰えばただの人殺しじゃなくなるのか、どういう理屈だ」と倉持に笑われていますが、この「金を貰わなければただの人殺しだ」というのが、やはり新必殺仕事人から出てきた三味線屋勇次の得意なセリフなわけです(笑)。
 倉持のキャラクターは、例えば山崎努の演じた初代仕置人の「念仏の鉄」などに近い部分があるので、このシーンは、後期仕事人の変に正義の味方ぶった言動に対する、初期仕置人からの揶揄のような感じはします。

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