鮎川哲也「死者を笞打て」

鮎川哲也の作品「死者を笞打て」に盗作の嫌疑がかかる。十年前に謎の女流作家が書いた作品そっくり、というのだ。世間は非難し、仕事は途絶える。身の潔白を証明するため鮎川は女流作家を探し出し、対決しようとする。さてその意外な結末は?実在推理作家の名が頻出する仕掛けも楽しい、軽妙推理長編。

 鮎川さんの本を読んでてつくづく思うのは、「ギャグ」とかじゃなくて、文章自体になんとはなしのユーモラスさがくるまれているってことですね☆
 笑いを取ろうとして無理やりとかあざとくとかでなくて、ごくごく自然に出てきてしまっているユーモラスさって感じです。それがほんとに自然になのか、それとも見事なまでに計算されてのことなのかわかりませんけれど、どちらにせよ感服するだけです(^^;。このユーモア感覚は、高木彬光にも横溝正史にもない、鮎川さん独特のものだと思うんですけど☆

 今、「死者を笞打て」という長編を読み返しているんですが、いや、面白い面白い\(^^)/。「鮎川哲也」本人が盗作の疑いをかけられて……という鮎川さんには(長編では)珍しい竹本健治「ウロボロスの偽書」的作品なんですが、この「不可思議なユーモア」が爆発しきってます(^^;。……とはいえ、鮎川哲也入門書としてふさわしいかというと、ちょっと外れてると思いますけど(^^;。
 鮎川さんのユーモアが「昔風」でないとは言いません(爆)が、「ギャグ」でなく、そこはかとなく存在している文体全体にユーモラスさが私は好きですね。

 でも、確かに女性に関しての「ユーモア」の部分は、非常にとってつけたような、なおかつ、なぜかいやにズロースだの(爆)(爆)、「落とす」(ストーン、と……(^^;)感じで「ユーモア」に持っていこうとしている感じで、……(^^;。

 昨日は「裸で転がる」を読み返していて、どこか天藤真を思い出しました。


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鮎川哲也の三番館シリーズ ※とってもネタバレ。

※三番館シリーズの短編群の幾つかについて、ネタバレ丸丸でコメントしているので、全作読了したのちしか読んではいけません。

☆バー「三番館」のバーテンが、安楽椅子探偵として、種々の謎を解き明かす短編シリーズ。

・春の驟雨
 自身のアリバイは用意した犯人が、せっかく作り上げた容疑者からアリバイを奪っておくことを怠るのは解せない。 これだけ手間暇かけて容疑者をこしらえたのに、その相手にもしアリバイがあったらどうしたんだろう?

・竜王氏の不吉な旅
 これはバーテンではなく探偵の推理だから、落ちがあっても仕方がないが、仙台の客とやらが日記を持ち出さなかったのは見とがめられたくなかったからというのは、鞄というものの存在が忘れられていないか。また、仮に手ぶらなら、なぜ手ぶらなのか。その必然への設定がほしい。大したことではないが、鮎川さんの作品に対してはなんだかやたら細かいワタシ(笑)。
 非常に切れ味もよく、印象にも残るラストだが、新聞やテレビに当然山辺の顔写真が出て、そしてその時点で竜王氏の深謀遠慮は浅はかにも崩壊しているのではないか。また、竜王自身が有名人とあれば、キャバレーで山辺を名乗っても、それが他ならぬ作詞家竜王氏だと気づく者も在り得たのではないか。少なくとも竜王氏はそれを用心するはずだった。つまりこの犯罪は、極めて穴だらけの深謀だったことになる。

・太鼓叩きはなぜ笑う
 アリバイ工作とウイスキーのトリックはよいとして、口実を設けて車から降りていたというのは、後出しジャンケンみたいでアンフェアだろう。
 このシリーズの第1作品集を再読したのだけれど、探偵はこれでいいとして、犯人の杜撰さが目に付くような気はする。まあ、だから、星影や鬼貫が出てくるまでもないし、長編にならないということか?

・走れ俊平
 疑問は2点。いくら小柄だ云々と言っても、着られる種類の服が全くなかったとは考えがたい。もう一つ、何しろ血塗れの服なのだから、それを、犯人もそうだが、鉄道関係者、警察、そしてマスコミが放置している、というのも、まずあり得ないだろう。騒ぎになり、この血は誰の血で、この服は誰のものだというのが追及されているはずだ。そして犯人はとうに露見していなければおかしい。

・菊香る
 ああもったいない、という感じ。もう少し枚数があればもうひとひねり入れていたんだろうな。そしてもっと快作になっていたはず。
 双子トリックであることを早々にばらしながら、それを逆手にとっての名作には、もちろん西村京太郎「殺しの双曲線」があるけれど、まあ、あれは長編だし、同じ形では語れない。けれど、読者の読みの先を先をと取っていく手の打ち方は見事なものだ。菊アレルギー一本で終わってしまったので、今一つ「とどめ」に欠けたのがいかにも残念。初期の枚数なら、もう一手が望めたんだろうなあ……
 それにしても、この作者の文章のユーモラスなのには相変わらず感動する(笑) 今回は特に、冒頭からいつもの探偵が出てくるせいもある(いきなりだから、しばらくの間、本当にいつもの彼か、それとも同業の別人か、怪しんでしまった。「読みすぎ」だなあ)。東川篤哉に精進を期待したい(TT)

・分身
 こうだろう、と思う先から、それを打ち消す布石を打っていくのはさすが。けれど、共犯となるとクリスティの「オリエント」ほど突き抜けてくれないと悲しい。ただ、入れ替わりトリックは「竜王氏の不吉な旅」よりは現実味がある。ラストの切れ味というのはないけれど(笑)

・百足
 バーテンの推理だと、なにしろセールスマンの視点だったはずだからおかしいのじゃないか、そう思って読み返してみたら、いきなり、被害者とセールスマンが共犯だったことを示すような描写が露骨にあって、苦笑した(^_^;)。それにしてもやはり、セールスマンの内面描写が同じ場面にあるのだから、やっぱり共犯というのはどうだろう。それとも、加藤の計画の全ての詳細までは、セールスマンの知らないところだったのか?

・マーキュリーの靴
 先に「百足」を読んでいたのと、あと、やはりついつい解説を読んでいたせいで、冒頭の編集者が怪しいのは、すぐ念頭に浮かんでしまった。抱いて出れば足跡の深さが、と思ったけれど、5センチの積雪じゃね(笑)。人を殺しておいて、落語じゃ笑えなくないかな?

・停電にご注意
 この「三番館」ものも、後半の短いものになると、推理クイズめいてきて、論理というより推測がまさってきてしまうが、4冊目の「材木座の殺人」に収録された中では、この「停電にご注意」は古い作品なので長さが倍近い。だから、少し期待して読んだけれど、このアリバイの作り方には仰天したね(笑)。すごいトリックだ(笑)。いや、馬鹿にしているわけではなくて、だってこれ、清涼院の「コズミック」の先駆みたいなものなんだよね。清涼院のあれは、かててくわえて作中作トリックでもあったわけだけど、クリスティの「オリエント」ともまた違った形の「全員共犯」タイプというのが、しかも、鮎川作品でそれというのがびっくりしたの(笑)。
ところで、写真の裏焼きかどうかというのは、ネガがどうこうという以前に、実際のその場所に行っていて、わからないものなのかしら。知識がないのでひたすら?となってしまう。

・ブロンズの使者
 三番館物に仕立て直される前のを読んでいると思うんだけど、確信はない。三番館にする必然性の有無は分からないけれど、とにかくこの「盗作の決め手」が面白かったのは覚えている。
 刑事コロンボの「第三の終章」が同じネタだったような気もするけど、それも確信はない(^_^;)。

・クイーンの色紙
 裏と表を間違えるのは、よほど凡庸、ということなら、色紙を探しているとき、誰かが、「あら、鮎川さんのは裏に書いてあるわ」くらい言いそうなものではある。
 それにしても、メタな味わいで、やっぱり好きだな、これ(笑)

・鎌倉ミステリーガイド
 鮎川文体は信じられないほどユーモラスだと思うのだけど、これはたぶん、若い新人作家の文章も大喜びでどんどん読んで、そして自然に吸収できていたからではないのかな、とか思う。
 この短編では、特に顕著で、一部分だけ切り取ってみれば、若い作家の新作と区別もつかないだろう。
 違うのは、この「本格」に対する情熱と愛情だ。この短編を読むと、なんだか、今となってはせつなくすらなってきてしまうのだ……

  
  
  

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