森雅裕「いつまでも折にふれて」

クリスタル細工のような瞳を持つボーカリスト錺泉深(かざりいずみ)のミステリアスな魅力で人気のロックバンド、HERGA(ヘルガ)。ニュー・アルバムの録音中、作曲家は不慮の死を遂げた。はたしてその死は転調していく運命のイントロなのか―。

 なんか、読み始めはミステリのような気がしていなかったので、人死にが出てきて違和感が(笑)。
 それにしても、モーツァルトの時もそうだったのですが、森さんの会話はユニークですね。笑えます(笑)。少し意地が悪いユニークさかもしれませんが(^^;)。
 章タイトルが「恋女の憂鬱」とか、なんだかZARDとかを思い起こしてしまいますが。。。

 無い物ねだりをすれば、題名がそのまま歌の名前として登場していましたけど、そういう形ではなくて、主人公のあの最後の方のセリフの中でだけさりげなく、出てくる1回だけだった方が、私なんかには印象深く感じられただろうなあとは思います。まあ、これは私個人の感じ方なので、全然瑕瑾ではないのですが(笑)。
 非常にキャラクターの立て方が上手いと思うんですが、佐野洋「推理日記」という本では否定的な論評をしていて、これは、森さんの小説での独特なセリフの応酬が、佐野洋氏の思う「小説」の体裁にそぐわないんだろうなあと思います。

 続編「六弦の天使」もあるというのは、やはりキャラクターが生きていると、その人生の続きも知りたくなるからですね。このあたりが、ただ決められたセリフをしゃべって、決められた行動を取るだけの小説の作中人物とは違うのでしょう。

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森雅裕「鉄の花を挿す者」

若手刀鍛冶の角松一誠は、99歳の孤独な師匠酒泉渉の訃報を聞き、岡山にかけつけた。鎌倉期の刀作りを再現する試みを最後の仕事と決めた酒泉は、二振りの刀を作っていたが一振りしか遺っていない。手助けをしていた相弟子の古志村捷が師匠の遺作と同じ見事な作品を作ったとの噂。その古志村をはじめ刀剣関係者が次々と不審死を遂げ、角松は真相究明に引き込まれていった―。一老匠の死を機に、刀剣の美に写し出される人間の醜さを問い、創造を問い、生き方を問い、愛を問う、渾身の傑作。


図書館にあった「鉄の花を挿す者」を借りて読みました。時代小説かと思ってました(笑)。これなんかも、なんだか読んでいると、モデル的な人がいて怒りを買いそうな。。。(^^;)
 たぶん、しばらくするとストーリーとかプロットは忘れて、けれども、キャラクターとかキャラクターの感情とかは頭や心のどこかに残っていそうな気がします。また、実はそういう本の方が私は好きかも。。。ストーリーやプロットが素晴らしい本もいいのですが、再読が効かないことも(^^;)。感情を読む小説は、何度読んでも感動したり泣いたりできそうで。。。(泣き虫(笑))

 新井素子「ネプチューン」も、どんなストーリーでどんなプロットでとかはまるっきり忘れてるんですが(^^;)、とにかくヒロインがいて、それが人魚か何かで、「食べる」ことが基本的な生きるコンセプトみたいなんですよ(笑)。食べなきゃ生きていけないから。
 で、男がいて、好きとか恋とかみたいなことがあったと思うんですが、ネプチューンにとっては(思いだした、ネプチューンっていうのがヒロインの名前だ! すると、人魚じゃなくて、とにかく水棲生物かな?)「好き」イコール「食べ物」なので、その男のことを好きになると、なんか「ぱく」とか食いついちゃう(笑)。

 プロットは進化か何かがからんでたと思うんですが、忘れ去りました(笑)。ヒロインのネプチューンの「好き」「食べる」というのだけがとにかくすごく印象的で。。。

 1冊の長編小説でも、短編でも、とにかくどこか1ヶ所でも、感情に触れる部分があると、不思議とずっと忘れないでいるものかも。作品名やら何やら一切合切忘れてて、ある時、ちょっとした拍子にその本に触れて、「あっ、こんなところに書いてあることだったんだ!」なんてことが時々あります、私の場合。。。

森雅裕「歩くと星がこわれる」

スマートさからほど遠かった青春の終わりに、男はただ一人愛した娘の面影を抱いてシチリアへ、伝説のロードレースに漕ぎ出す―。かたくななまでに一途な男と、無気力なほど屈託ない箱入娘。’80年代を悼む少数派恋愛小説。


 こんなに読んでいてつらくてつらくてたまらなくなる小説は久しぶりだ。。。

 作者の自叙伝的な小説だとかすかに聞いていたので、作家になる上での軋轢やら何やら、どちらかといえば第2部で「少しばかり」描かれていた部分が中心なのかな、、、と思っていて、いわば『ひとごと』として気軽に読み飛ばせるようなつもりで読み始めてしまった。。。

 ひとごととして読めば、無責任に冷酷に面白がれるし、あるいはせいぜい「同情」し、「賛同」し、あくまでも窓のとおくのこととして。。。。

 しまった、これは今さら読むのはまずかった、今さらというか、今時分読むのはまずかった、、、、と思った。
 つらくて苦しくてたまらない。長編を読む時間と気力が最近薄れてきているので、数日掛けてちょっとずつ読んでいこうかなどと思っていたのだけれど、中断はとてもできなかった。どんな形であっても決着がついてくれないことには、読んでいるこちらまでがつらくてつらくてどうしようもなくなりそうだった。ひとごとではないから。。。少なくとも、ひとごととして読み飛ばすには、あまりにやはり身近すぎることだったので、とにかく中断して放りだすにはあまりに。。。

 要するに、想像力や感性だけでは賛同や同情で終わってしまう、少なくとも私レベルの人間性はそんなものであって、自分自身がどうしようもなく経験した、あるいは今となってさえも経験した過去としていられるほど達観できていなかった、、、いや。
 これではまるで今の自分がかつて愛した人を今も同じように思い続けているかのようだ。そういう意味ではなく。。。

 裏切ること裏切られることへの、先ほどから何度も何度も同じ表現になってしまうのだけど「どうしようもない」このつらさ。
 それを追体験させられてしまうことへの――つまりはそういう、そういうつらさで。。。

 とにかく第1部が終わって、どんなに息をついたことか。

 第2部はそれこそ或る意味ひとごとで済ませることができた。。。

 これは、少なくともこの第1部は、やっぱり、追体験につながる私のあまりにもつらい過去、記憶、体験、してしまったこと、だ。

 この物語を再読する勇気はない。一度読んだのだから、耐えきれる耐えきれないではないのだが、耐えたいとはみずから進んで思うことはできない。何度読んでも、たぶん同じつらさを味わわされるだけのことだろう。逃げさせてもらうことにする。

 まったく別のことを書いて締めくくることにする。
 先に読んだ「いつまでも折にふれて」のひとことコメントとして、このタイトルが歌の題名として何度か作中に登場したが、個人的にはラスト近くでのヒロインのセリフの中にさりげなくぽつんと出てきたあの一ヶ所だけの方がよかった。。。などと無い物ねだりなことを感じた、とひとさまへのメールに書いた。
 今回は、この「歩くと星がこわれる」というタイトルのことを、動けば、行動すれば、一途に必死に生きれば、それは何か大切なものをただ哀しく壊していってしまう。。。というような意味なのかなと思いながら読み始めて。。。そして、第2部に入って彼女のセリフ、会話の中であらわれてきたこのタイトルのことで、ああ、、、、と思う部分があった。

 第1部の後遺症で、立ち直れていないので、感動とかそういうことではなかったのだけど。

 二度とは読み返せないだろうけれど、もしかしたらこれ以上はなく心や記憶に残る小説だったのかもしれないと。。。思う。つらくて、苦しかったけど。


森雅裕「歩くと星がこわれる」


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