夕暮れの旅

白泉社文庫「三原順傑作選’80s」所収
self murder series…4


「セルフ・マーダー・シリーズ」という4編からなる連作のひとつ。連作といっても、登場人物たちに関連はなく、要は「セルフ・マーダー(自殺)」をテーマとした連作ということです。「はみだしっ子」から「ムーン・ライティング」に向かう途上に出現したこの連作は、私にとってずっと鬼門というような作品たちでした。あまりにも暗く、重く、救いがない感じの作品があり、特にこれを読んでいた高校・大学の頃は、自殺というものに関して全く許容することをしないという意志を持っていた時分だったので、尚のことでした。「これに与することはできない。。。」という反撥、抵抗を持っていたのです。
 けれど、連作の最終作、「夕暮れの旅」の主人公の言葉には、どうしても正当性を感じずにはいられない、、、そんな部分もあり、それゆえに遠ざけてあまり読み返すことをしたくなかった、ということもありました。

 主人公のボブは自殺コンサルタントを開業しており、志願者たちの無神経さに嫌気がさしてきています。

……………………

 ガス爆発で隣人を巻き添えにする可能性とか 電車の利用客達の時間を奪う事にさえも気づかない連中の多さよ!!
 “そんなだから貴様ら社会に適合できず自殺しかできねェんだろう!”…と言ってやりたくなるが
 どうやら 奴さん達 現実から逃れられると思った途端 夢見心地になって
 自殺もまた歴とした現実であるって事を忘れちまうらしい
 
……………………

 そう愚痴をこぼしながら、しかし、自殺者を嫌悪したり責めたりする「まともな人」には逆の矛先を向ける。

……………………

 なぜ そんなに嫌うんですか? 連中が…あんたたちが後生大事にしがみついている“この世”を共に讃えもせず…逆に捨て去って行くから?
 いや! あんたたちはそうは言わない!
 連中が無責任に有形無形の負債を残して行くだの はた迷惑も考えず観光地で腐乱死体になって転がってるだのを言うんだ!

 自殺もやり方次第では利点があるんですよ!
 精神が崩壊しきる以前の尊厳を保った死…そして
 他の人々への配慮をともなった死になり得るというね!

 オレが手掛ける連中には あんた達に難癖つけられる様な死に方はさせないからな!!
 そして いつか その実績のもとに言ってやる!! “あんた達が正しいのもこれまでだ!!”と

 もしいつか…自殺が
 認められた行為として陽の当る場所へ出られる日が来たなら
 どれほど多くの人々が穏やかな気持ちで最期にのぞめるか

………………………

 「はみだしっ子」のグレアムには、どんなに彼が「行く」ことを望もうと、なんとしてでもそれを止めたいと思わずにはいられず、けれど、ボブの言葉の正当性もあまりに当然のことのように馴染めてしまう。。。

 私も、実のところ自殺というものを考えたことがないわけでもないのですが、とりあえず生き残っています。

 「必殺必中仕事屋稼業」の最終回、仲間・子供を失い、「死なせて!」とセルフ・マーダーに走ろうとする草笛光子演じるおせいに対して、緒形拳演じる半兵衛が言い放つ。
 「おかみさん、俺たちは生き残っちまったんだ! 人間生きるため死ぬため大義名分をほしがる! だがそんなものはどうでもいい! 明日のない俺たちは、無様に生き続けるしかないんですよ! おかみさん……いや、おせいさん。無様に生き続けましょうや……」

 ぎりぎりいっぱい考えての選択をする、死ぬのでも生きるのでも。つまりは、それしかないんだろうな、、、と、そんなふうに思いはするのですが。。。
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