宮部みゆき「クロスファイア」

四人の若者が廃工場に瀕死の男を運び込んできた。その男を“始末”するために。目撃した青木淳子は、力――念力放火能力(パイロキネシス)を放ち、三人の若者を炎上させる。しかし、残る一人の若者は逃走。淳子は、息絶えた男に誓う。「必ず、仇はとってあげるからね。」一方、現場を訪れた石津ちか子刑事は、不可解な焼殺の手口から、ある事件を思い出していた!
 話題の超傑作、ついに登場!


 アクション系を予想しながら読んで行くけれど、確かに確かにの宮部みゆきの世界。。。
 結局、「無条件の正義」なんぞという鼻持ちならないことには我慢できないだろう。。。と思う。。。
 なにより。正義のヒロインこそが最初の加害者であるという構造は。。。
 筒井康隆「七瀬ふたたび」の火田七瀬以来の、正統派のヒロインに間違いないだろうと思う。。。 さて、後半どうなっていくのかは、と。。。
 それにしても、個人で戦う「正義の味方」ならばそれほどのこともないのが、「組織」ということになった途端、いきなり胡散臭さで満ち充ちてくるのはナゼだろう?(笑)

 そして、後半を読み進んで。。。
 ああ、まさか。。。まさかこんなふうに終わっていこうなんて。。。
 予想の範囲など逸脱しきって、物語は進んでいったから。。。
 そしてこれは。やはり紛れもない宮部みゆきの世界であって。。。
 こうであるだろうと思った人々をそういうモノではないのだと裏返してみせるのは、決してシニカルなのでも突き放しているのでもなく。
 「本所深川ふしぎ草紙」で描いたように。「そんなものではないのだ」と。ないのだ、、、、と。

 仕置人を肯定しないではいられないのだけれど、そこにはガーディアンのワクがある。
 それはみとめずにいることはできない。
 だから。けれど。ちゃんとそこにも衣笠の言葉は待っているのだ。
 どこまでも、、、用意周到に裏返していくのは。。。
 けれど最後には花が届く。
 感傷と思いつつも泣かされてしまう。。。
 だから。
 他ならばあまりと言えばあまりなはずのエンディング、締めくくりの言葉が。
 裏返し尽くしながら手を伸ばす言葉だと思うのだから。。。

クロスファイア(上)クロスファイア(下)
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宮部みゆき「とり残されて」

婚約者を交通事故で喪った教員の「私」は、勤め先の小学校で、「あそぼ」とささやく子供の幻に出会う。そんな折、校内プールに女性の死体が…。


 ずっと以前に読んだことはあったはずなのだが、今回再読してみて、あっと思ったのは、この話、ダークゾーンなのだ。。。

 暗い情念――婚約者を殺された恨み――に取り憑かれたヒロインが、その暗い情念から脱けだして、光明を手にする話。。。なように予想して読み進んでいったのだが、そんな「宮部みゆきだからこうだろう」的な簡単な話にはならなかった。
 そう、宮部みゆきは「必殺者」なのだった。「燔祭」~「クロスファイア」でも見られるように、単純に「復讐は虚しい」云々で割り切れる正義の味方ではない。ハートフル、癒し、そういうレベルの語り手ではないのだ。

 恨み、復讐、人が人を殺す、そういったことへの徹底した物語としては、貫井徳郎「殺人症候群」以上のものを今のところ知らない。刊行後、年に一度「殺人症候群」は読み返しているが、読み返せば読み返すほど、この小説の凄み、重み、悲しみをより一層感じさせられる。

 だが、いつか宮部みゆきもまた、「クロスファイア」を超えた「仕置人」の小説を語るときが来るのかもしれない。
 この短い小説を読んで、そんなことを思った。。。

とり残されて ( 著者: 宮部みゆき | 出版社: 文藝春秋 )

宮部みゆき「誰か Somebody」

著者2年ぶりの現代ミステリー 待望の書き下ろし!

杉村三郎35歳、妻子持ちのサラリーマン。妻の父親は大財閥「今多コンツェルン」会長の今多嘉親で、三郎は会長室直属のグループ広報室で記者兼編集者として働いている。すでに他界した妻の実母は嘉親の正妻ではなく、三郎も後継者として婿入りしたわけではないが、「逆玉の輿」であることに変わりはなかった。
ある日三郎は義父から妙な依頼を受ける。嘉親の個人運転手を長年務めてきた梶田信夫が自転車に轢き逃げされて命を落とし、残された二人の娘が父親の想い出を本にしたがっているので、編集者として相談に乗ってやって欲しいというのだ。姉妹に会うと、妹の梨子は本を出すことによって、犯人を見つけるきっかけにしたいと意気込んでいるが、結婚を間近に控えて父を失った姉の聡美は、そう上手くいくはずがない、と出版に反対しており、結婚の延期も考えていることがわかる。
ところが、聡美が反対する真の理由は別にあった。彼女は、妹には内緒という条件で、三郎に真の反対理由を打ち明けた――運転手になる前の父は職を転々とし、よくない仲間とも付き合いがあったらしい。玩具会社に就職してようやく生活が安定した、聡美が4歳の時、彼女は「父に恨みがある」という人物に"誘拐"され、怖い思いを味わった。そのあと一家は玩具会社をやめ、縁あって今多の運転手として雇われるまで、再び不安定な暮らしを余儀なくされた。そんな父の人生を梨子に知られたくない――と。さらに聡美は、父の過去の悪い縁が今も切れておらず、「あれは偶然に起こった轢き逃げなんかじゃなくて、父は狙われていた。そして殺されたんじゃないかと思うんです」と訴えるのだった。三郎は、姉妹のそんな相反する思いに突き動かされるように、梶田の人生をたどり直し始めた・・・・・・。


宮部みゆきは、相変わらず「きつい」。。。
読み始めてすぐ感じたのは、ああ、やはり濃厚な世界だ。。。というようなこと。
「事件」「ストーリー」だけをさっさと書いてしまう通り一遍の「推理小説」作家というのも世の中には残念ながら存在する。けれど、例えば宮部みゆきは違う。登場人物達の「感情」が最優先されている、そんな濃厚さがある。
強いて言ってしまえば、事件やストーリーは「この際どうでもいい」くらいで、登場している人達の「感情」がこれでもかと言わんばかりにしっかり書き出されているのだ。だから、事件やストーリーが仮に他の「推理小説」と変わらなかったとしても、全く読んでいての重みが違うのだ。そこが「本物」だと思わせるところだ。
恵まれている、ところもあるだろう。もしかしたら、他の推理小説作家なら、こんな「誰か」のようなタイトルを付けることからして許されないかもしれない。もっと安っぽい、「財閥運転手美人姉妹の愛憎と誘拐の謎」なんていうタイトルしか認められないかもしれない。そんな実例も知らないではない。
「誰か」――このタイトルは、「模倣犯」同様、必ずしも内容に即していないかもしれない。けれど、本文で言及されているのとは別に、いろいろと心に残ってくるものがある。響いてくるものがある。そんなタイトルになれている。そんな、、、本文であるからだろう。
どこかで、、、誰かが。
「事件」や「ストーリー」は忘れても、登場人物達の感情はいつまでも読んだこちらの心のどこかに残っている。そんな小説や、そんな小説を書く作家のことを、たぶん本物だと思っている。。。

誰か ( 著者: 宮部みゆき | 出版社: 実業之日本社 )

宮部みゆき「模倣犯」

公園のゴミ箱から発見された女性の右腕。それは「人間狩り」という快楽に憑かれた犯人からの宣戦布告だった。比類なき知能犯の狂気に立ち向かう第一発見者の少年と孫娘を殺された老人、二人を待ち受ける運命とは?

 別名、拷問ブロック。

 あまり言うべき言葉を持たないのだけど、ミステリがその一方でゲーム性の強いエンターテイメントであり、もう一方でドラマとかあるいは精神?とかを描くための『文学』として存在を成り立たせるように復活しているのだとすれば、この作品は後者の側の忘れられない1つであると思う。
 タイトルは今一つ違って感じられるし、「真犯人」である網川浩一の描き方にも、狙いとしてあと一歩届かないところもあるとは思うのだけれども、それでもなお、この作品を読んで、今までの宮部みゆきの作品についても、もう一度読み直してみないといけないな、などと偉そうなことを思うに至った。

 この作品には、読者として、拠って立つべき「正義の側の人物」がいない。安心して、この人物の「味方」でいればいい、という者がいない。みんな、正しくて、間違っていて、優しく、汚く、その繰り返し。

 以前から、「片葉の葦」(「本所深川ふしぎ草紙」に収録)などで、視点の転換、立場の変換に、ああ。。。とは思わされては来たのだけれど、この作品で、とりあえず宮部みゆきは突き詰めるところまで突き詰めているように感じた。

 ミステリとしての構成には、見事なものがある。ずっと真犯人を隠したままの展開でも、それは1つの傑作であったろうし、逆に、最初から犯人たちの側から描いても、それはやはり傑作であっただろう。けれど、その双方を思いきり書いた、そのためにこれだけの枚数は必要だったのだけれども、双方を書いたことで突き詰めるところまで突き詰めえた。そういう作品だったのだと思う。

由美子さんまで死んでしまったのは、つらかった。

「模倣犯」として網川を追いつめるくだりは、一種のカタルシスがあった。

 樋口めぐみはどうなっていくのだろう。

 安易に引用したくなる「名セリフ」が随所にあった。真一だって、しっかり盗作していた。

 いろんなことを思いながら、読み終わることになった。

 これはまぎれもなく、「ミステリ」で、そして、ミステリとしてこの作品が出てきてくれてよかったと思う。

 容赦のあまりない作品ではあったけれど。。。


宮部みゆき「模倣犯」



宮部みゆき「R.P.G.」

 しばらく読んでいるうちに「仕掛け」自体は読めたのだけど、もちろん宮部みゆきの本なので、その仕掛けオンリーが読みどころではない。
 もっと長く書こうと思えばいくらでも方法はあったはず。。。でも、解説部分にあったように、つまり戯曲を書きたかったのだとすれば、なるほどね。その分、重量級の感傷・感動はなかったかもしれないけれど。
 なぜ石津刑事が出てこなければならないのかとも思ったけれど、最後の、少女にかけたセリフで彼女の存在意義も確かにあった、と思った。「クロスファイア」を知っていたから解る言葉というもので。。。こういうのがシリーズ物でのひとつの武器というものだ。前作を読んでいなければアレだけど。
 タイトルは少なくとも二重の意味を持っていたわけだけど、さらに重ねられた意味もあったのかも。ついでに言えば、これはある意味、もう一つの「理由」の家族たちなんだよね?

R.P.G. ( 著者: 宮部みゆき | 出版社: 集英社 )

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