東野圭吾「聖女の救済」

男が自宅で毒殺されたとき、離婚を切り出されていたその妻には鉄壁のアリバイがあった。草薙刑事は美貌の妻に魅かれ、毒物混入方法は不明のまま。湯川が推理した真相は―虚数解。理論的には考えられても、現実的にはありえない。

この最新長編を読む前に、最新短編集の「ガリレオの苦悩」の方から読んだ。この短編集から、内海薫が登場している。
ドラマ化された際に出現したテレビ向け、視聴者向けのキャラクターだったが、小説で再生・新生した彼女は、テレビドラマでの「視聴者に親しみの持てる」ワトソン役とは違っていた。むしろ、独りで「女性刑事」として主人公になれるだけの力を持っていた。この辺りが、東野圭吾の安易でない作家魂といったところだろう。
こちらの長編でも、内海薫は十全な活躍をする。内海、草薙、そして湯川の、三者三様の動きや思いが、小説を織り上げていくのだ。

ミステリとしては、カバーの煽り文はもちろん魅力的だった。「君たちは負ける。僕も勝てないだろう。これは完全犯罪だ」。これは名探偵対名犯人の知的対決ものとしての本格ミステリではわくわくさせずにはおかないセリフに違いない。

トリック自体は例によっての物理トリックなので、個人的にはあまり驚きはない。もちろん、「1年」という、なるほど「ありえない」ことへのある程度の意外性はあるが、これについても個人的にはさほど慄然とはしなかった……あの場面のリピートに気がつくまでは。

何日かかけてゆっくり読んでいたら、読み過ごしてしまっていたかもしれない。1日で一気に読んでいたから、あれ、と思えたのかもしれない。
そして、同じような会話……と思いながら、冒頭と読み比べたとき、初めて衝撃が走ったのだ。
これは――叙述トリックというものではない。けれど、誰もが思っていたはずだ。これは、その日の会話だったのだと――。
これは――。
そして、ようやく犯人の思いの重みが感じられるのだ。その、決意と情念を……。

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東野圭吾「ある閉ざされた雪の山荘で」

1度限りの大トリック!
たった1度の大トリック!劇中の殺人は真実か?
俳優志願の男女7人、殺人劇の恐怖の結末。

早春の乗鞍高原のペンションに集まったのは、オーディションに合格した男女7名。これから舞台稽古が始まる。豪雪に襲われ孤立した山荘での殺人劇だ。だが、1人また1人と現実に仲間が消えていくにつれ、彼らの間に疑惑が生まれた。はたしてこれは本当に芝居なのか?驚愕の終幕が読者を待っている!


初読の時はそれはそれは恐れ入ったのだけど、再読してみると、「あの」部分はゴシック体も傍点も無しで「。。。あれ(・_・")?」と思わせた方がいいような気もした(笑)。まあ、それは偉そうな無い物ねだりとして、やはりこの手のトリックは早い者勝ちだわな(笑)。
 このエンディングもわりと好き。
 そして何より、2つの描写でまるっきり久我君のイメージが違うところが。。。(笑)

 私も「芝居」は好きだな。。。。
 自分のことを嘘つきかと思ったりもしたけれど、要するに、私は「芝居」が好きだという、ただそれだけのことなのかもしれない。。。 そんな、、、気も、、、した。。。

東野圭吾「容疑者Xの献身」 ※ネタバレあり※

数学だけが生きがいだった男の純愛ミステリ
天才数学者でありながらさえない高校教師に甘んじる石神は愛した女を守るため完全犯罪を目論む。湯川は果たして真実に迫れるか


 このタイトル……たぶん、「献身」で足りたと思うのだ。「悪意」「卒業」「秘密」「手紙」、漢字2文字だけのタイトルで、東野圭吾はすでに何冊もを発表している。
 それをわざわざ冗長なタイトルにしたのは、「分身」「変身」など眼にも耳にも紛らわしいタイトルの作品もすでに発表しているからなのか――というのは、どうでもいい想像だ。そもそも連載時のタイトルは「容疑者X」だったらしい。となれば、連載時はミステリらしさを強調し、刊行時には作品の本質たる「献身」にしたが、連載タイトルと完全に変えるのもどうかとの考えがあって……という推測も成り立つ。
 いずれにしろ、「献身」――。ミステリとしての見事さと共に、献身……ここまでするのかという、予想も妄想さえも超えた行動は……

 ミステリとしてのたくらみは、かつて『刑事コロ○ボ』「さらば○督」等でも試みられた叙述トリックの仲間だ。倒叙と見せかけて、さらに「知っているつもり」の読者を騙す石神に感情移入した時には、すでに術中に嵌っている。

 が、続いて石神を偏執的だと感じた時には、輪をかけた完全なる敗北を約束されているのだ。

 名探偵と名犯人、天才対天才、その本格味を感得できる作品だが、それすら背景に後退してしまう「献身」の戦慄が待っている。

容疑者Xの献身

東野圭吾「悪意」

犯人が決して語らぬ動機、加賀刑事の推理は!?
誰が?なぜ殺したのか!?超一流の「フー&ホワイダニット」

人気作家・日高邦彦が仕事場で殺された。第一発見者は、妻の理恵と被害者の幼なじみである野々口修。犯行現場に赴いた刑事・加賀恭一郎の推理、逮捕された犯人が決して語らない動機とは。人はなぜ、人を殺すのか。超一流のフー&ホワイダニットによってミステリの本質を深く掘り下げた東野文学の最高峰。



 トリッキーな部分の見事さと、はまれる笑いとが好きで、時々読んでいる作家さんだけど、この「悪意」は、前者かな。
 いきなり早い段階で探偵役が犯人を指摘してしまうところとか、例によってと言うべきか、この作家らしいパターン破りで、そして。。。
 きっちりよく構成された本格でした。こういう作品は、先入観無しで読まねば(笑)
 なので、まだ読んでない人のためには、あんまり何にも書いちゃいけないのだけど。
 タイトルからして、どちらかというと、「宿命」とかのタイプの作品かと思っていたのですが、違いました。いや、少なくとも私は違うと思った(笑)
 これは見事にトリッキーな、○○トリックの作品なのよ。
 まあ、それはそれとして。。。
 一番、心に残ったのは、実際問題、佐々木丸美「罪・万華鏡」のように、『視点によってこうも眼に映るものは変わるのか』というところ。。。
 だから、私にとっては、この作品のタイトルは、「悪意」じゃないんだよなー。。。
 どんなタイトルがいいかは、わかんないけど(笑)
悪意 ( 著者: 東野圭吾 | 出版社: 講談社 )

東野圭吾「秘密」

妻・直子と小学5年生の娘・藻奈美を乗せたバスが崖から転落。妻の葬儀の夜、意識を取り戻した娘の体に宿っていたのは、死んだはずの妻だった。その日から杉田家の切なく奇妙な"秘密"の生活が始まった。映画「秘密」の原作であり、98年度のベストミステリーとして話題をさらった長篇。

 これは、男として、とても切なく、つらく、苦しい話でした。。。
 女性が読んだらどんななのかな(?_?)

 少し違うのですが、これを読んだあと、国分寺公彦「偽造手記」というのを読みました。こちらは全然傑作という感じではなかったのですが(失礼だ。。。)、ただ、主人公が奥さんの浮気を掴もうと、日記を読んだり盗聴したり、あがくところで、ふと「秘密」の一場面を思い出しました。ストーリーの細部は忘れても、こういう「感情」については忘れられずに、いろいろなときに心に甦ってくるんでしょうね。

〈文春文庫〉 秘密

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