北村薫「ターン」

真希は29歳の版画家。夏の午後、ダンプと衝突する。気がつくと、自宅の座椅子でまどろみから目覚める自分がいた。3時15分。いつも通りの家、いつも通りの外。が、この世界には真希一人のほか誰もいなかった。そしてどんな一日を過ごしても、定刻がくると一日前の座椅子に戻ってしまう。いつかは帰れるの?それともこのまま…だが、150日を過ぎた午後、突然、電話が鳴った。

 「スキップ」よりこちらの方が胸に迫ってくるのはどうしてか解らないけれど。。。
 〈真希、しっかり〉の言葉を、お母さんに伝言ゲームで伝え、お母さんが涙をこぼしたシーンで泣けてきたのは、やはり「つながっているのだ」ということへの感情移入のせいなんだろう。。。とは思う。。。

 「不毛なのは〈毎日〉ではなく〈わたし〉だった。そういう人間が、どうして生きている世界に戻れよう。」

………………

 「ターン」は、とにかく「余分」な登場人物がいないので(「スキップ」の登場人物たちが「余分」という意味ではもちろん無いのだが)、主人公に完璧に感情移入できる。そして、二人称が一気にその正体を現す瞬間、「ああ。。。!」と。。。

 もう2、3度読んだつもりだったのだけど、違ったのだろうか。今回読んでいても、驚いてばかり。。。
 まず、なんだか、一人称のような気がしていた。「スキップ」は確かに一人称。けれど、「ターン」は二人称で始まっていた。「リセット」は三人称だったのかな? 「時」の三部作は、人称も三部作だったのかもしれない。(「リセット」を読み返してみたら、違いました(笑))
 そして、「彼女へ」の二人称から、「彼」の一人称へ、そして、「彼女へ」の二人称がそのまま移り変わって「彼女」の一人称へ。そんな変遷があることも、全く記憶には残っていなかった。。。

 だから、「スキップ」よりも重層で、そして、きついところもあった。
 ただ、「ああ」と思ったのは、闖入者たる若者を、主人公はとうとうとうとう「君」付けで言うことをやめなかった。

 映画版を観たのだけれど、ヒロインの造形は案外原作とそうは違っていなかった気もした。ただ、相手役のほうが、映画だとかなり弱かった。愛する。。。そうなる理由に欠けていたと。

 「ターン」物語の『核』は、きっとそこにもあったはずだ。

ターン
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新スタートレック「悪夢のホログラム」

 これもSFもので(「スタートレック」そのものがSFなのはさておき(笑))、特に、新スタートレック中盤以降から、ほとんどSTの御家芸という感じになって来た感もある「時間もの」の範疇……ではない(笑)。少なくとも冒頭はいかにもそれらしいのだが、いかんせん邦題は完全にネタバレで、著しく興趣は削がれてしまう。

 SFものでなければ、最初から、これは「スパイ大作戦」的なトリックか……という「現実味のありそうな」仕掛け、というのもあり得るが、何しろSF、あるがままに時間ネタかもしれない……という可能性を、この邦題は粉砕しているわけで、これはたとえば「オリエント急行」に「○○が犯人だ」という邦題を付けたようなものじゃないかしら(^^;)

 それはともかく、そうした日本語版での残念さがあっても、見破ったと思えた「真相」が次々と変転していくのは見事だった。少しくどかったかもというところも(笑)
 ミヌエットの件りは、よほどのマニアにとってしか不明では?

新スター・トレック コンプ・シーズン4 コレクターズ・ボックス(通常版) ◆20%OFF!

刑事コロンボ「自縛の紐」

 これは、とにかくタイトルが倒叙物としては魅力的。鮎川哲也の短編集で、表題が「自負のアリバイ」というのがあったけれども、それに匹敵する挑戦的なタイトルだと思う。どうやら今度の犯人は何か致命的なミスをしているようだ、、、自縛の紐、、、自らを縛ってしまう罠を、自分自身に仕掛けてしまっていて、それをコロンボが見抜くんだろう。。。観る前からこちらも「頑張ろう」と思ってしまう←何をだ(笑)
 で、実際観てみると、確かに本格的な、初心に返ったような(笑)、倒叙物のスタンダードだった。

 回も進んだところなので、少し地味だったくらいかもしれない(^^;。「別れのワイン」的な感動感傷パーツも、「権力の墓穴」的な犯人設定の奇抜さも、あるいは観ているこちらを騙すような仕掛けもなく、正面から倒叙ミステリとして作っているのだ。
 贅沢なことに少し物足りなく感じてしまうが(^^;、やはりこういう初心作品もたまにはあるべきだ。たまにはというか、新シリーズはこういう作品をきちんと作るべきなのである(TT)。ねえ。

刑事コロンボ 完全版 Vol.13 権力の墓穴/自縛の紐

必殺仕置人第8話「力をかわす露の草」

危機に見舞われる仕置人 ― 相手は狂気の女と大男。
女には権力、男にはバカ力。共にまともに向かって勝てる相手ではない。


 これは加害者側のドラマ展開が少し印象に残る。。。けれど、やはり今ひとつインパクトは弱いかな。
 仕置人たちがやられていく「手強い相手」的な展開ではあるのだけれど、そして加害者を中心にしたドラマ部分は濃厚なのだけれど、仕置人たちの心理面が少し薄い。
 錠が鉄砲で撃たれて傷つき、おきんが逆上、自ら仕置料を出すが、「情に溺れてできる仕事か」と鉄に諭される。このあたりは後の仕事人シリーズで多用されるのだけど、その最初の「掟」的な現れはこの回なのかもしれない。鉄の言い方も、後のカッコつけ、大見得切っての「これが掟だ!」とは違って、「こんなこと考えてるんだよ」という言い方で、その分気取っていなくて印象強い。
 あれ、なんだかこう書いていくと、案外印象強い作品だったかもしれない(笑)

必殺仕置人 VOL.3 ◆20%OFF!

はみだしっ子part9 そして門の鍵

そしてまた、この「そして門の鍵」も、シドニーの登場、またアルフィーも、ということで、これ以降の四人の運命の大きな転換点ではあるのだが、個人的な印象は薄い。これは、長さが足りない、もっと長編でなければならないだけのエピソードだった、ということではないかと思う。
 シドニーというキャラクターの置かれた状況は特異だが、中途半端に終わってしまった感じで、あまり深くには感情移入できないのだ。
 そのせいか、いつまでたっても、アルフィーとシドニーのキャラと名前がよくごっちゃになる(笑)。アルフィーについては完全にそうなのだが、シドニーにしても、キャラクターと設定はあるが、それ以上の背景や人物像がほとんど描かれずに終わり、たとえばエイダの父のミスタ・ムアと同じ立ち位置にとどまってしまったように思う。

 「つれて行って」の頃になってもアルフィーとシドニーの影は四人組の内外に存在し、特にグレアムはシドニーのことを、彼の言葉を思い出す。「抵抗だけが、ボクの中での唯一の真実」……
 このシドニーの姿があと今少し描かれていて欲しかった。それは……たぶん、「ムーン・ライティング」のトマスの前哨戦のような気もしたりするのだ。

 エイダの再登場、グレアムと父との対峙、そしてアンジーと母との対峙など、物語の展開としては外せないエピソードには違いないのだが。

はみだしっ子シリーズ 全13巻+2冊 三原順/作

新スタートレック「恐怖のワープ・バブル」

 これも「SF的な奇妙な現象が起きて……」タイプで、かなりスリリングで楽しめたもの。ちょっとした発想の転換が必要なところが、いかにもSF(笑)

 今回はドクター・クラッシャーのメイン回なのだけど、あまりこのキャラクターに思い入れはない。それでも十分面白かったのは、これまでにやはりドクターのキャラがしっかり確立していて、彼女の焦燥感などへの感情移入が容易だったからだろう。
 そして当然ウェスリーが展開に大きく関わってくる。このキャラも番組開始当初は、「大人の番組に邪魔だなあ」などと感じて好きでなかったのだが、次第に変わった味を魅せるようになった。
 SFネタの場合でも、キャラのよしあしで出来不出来は変わる。「新スタートレック」は、回を重ねるに連れてキャラクターがどんどんよくなっていったシリーズだろう。

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刑事コロンボ「権力の墓穴」

ヒュー・コードウェルは妻殺しを打ち明けるために、隣人のロス市警次長・マークに電話を入れた。詳しく話を聞いた末に、マークは彼に自首を思いとどまらせ、別事件の強盗犯の仕業に見せようと計画する。

 私は基本的に、「共犯者」がいるプロットというのは好きじゃなくて、1人の知能犯が全てを支配している。。。というタイプのミステリが好みなのですね。というのは、だいたい、共犯者がボロを出すとか裏切るとか、そういう話を少年時代にやたら目にして、うんざりしちゃったもので(笑)。

 その点でいえば、コロンボシリーズでも最初の「殺人処方箋」、これも共犯者もので、そして私のがっかりするタイプのラストだったのだけど、ただ。。。映像本編というより、ノベライゼーションの方で、コロンボがこの共犯者たる犯人の愛人に対して、あんたはこの私にずっとつきまとわれる、犯人の助けなんかは当てにならないぞ、あんたは――
 「1人で戦うんだ」
 と言う、この「1人で戦うんだ」と脅しているのか励ましているのかよくわからないようなセリフがなんだか不思議に気に入ったので、おかげで「殺人処方箋」は消去されることなくDVDのコロンボシリーズの中に録画されたまま生き延びています。まあ、記念すべきコロンボ第1作という意味もあって残っているんですが(笑)。

 さて、前置きだけが長くなりましたが、この「権力の墓穴」も共犯者ものです。が、むしろ交換殺人というか操り型のイメージも強いので、あまりがっかりする印象はありませんでした。また、この事件でのいちばんの特徴は、これは倒叙ものなので平気で言ってしまいますが、犯人がコロンボの上役である部長刑事その人だという点で、コロンボは何しろこの上司の指示に則って、この上司本人の犯した殺人の捜査をすることになるわけです。これはなかなかどうするどうなるミンキーモモという面白さがありました。

 そしてコロンボシリーズの眼目となる犯人の特定、露見についてですが、ここでまた1つ自分の好みを言ってしまうと、私は頭のいい犯人がそれでもついミスをしてしまっていて、それがもとで露見する、というタイプの倒叙ものが好きなので、捜査側が犯人に罠を仕掛けて――というタイプだとがっかりしてしまうのです。コロンボで言えば「パイルD3の壁」が一番がっかりもので、世評の人気の高い「ロンドンの傘」なんかも私には楽しめなくなってしまうものでした。
 この「権力の墓穴」もコロンボが罠をかけているんですが、この罠が何とも人を食ったやり方で、そしてラストのいよいよというところでの上司との会話がワクワクさせるものになっているので(これは「野望の果て」の同じくラストシーンでも同様にワクワクできました)、罠ラストであるにもかかわらず実は好きな作品として大事に録画保存してあります。

 まあ、なんです、好き嫌いは結論ではない、と(笑)。嫌いだ嫌いだと思っていても、ちょっとしたことで好きなケースも出てくるということで、食べ物はもとより人間関係でも、嫌いと決めつけずに接し続けていれば、突然転換することもありうるのかもしれないと、突然宗教的訓辞をして、この項は終わるものであります←莫迦(笑)。

刑事コロンボ 完全版 Vol.13 権力の墓穴/自縛の紐

喜国雅彦・国樹由香「メフィストの漫画」

「ミステリに至る病」をはじめとする喜国ミステリ漫画、豪華作家陣が漫画でペットと登場する「国樹由香のあにまる探偵団」他を収録。『メフィスト』掲載ほかをまとめ単行本化。

『国樹由香のあにまる探偵団』
有栖川有栖、北村薫、綾辻行人、小野不由美、法月綸太郎、我孫子武丸、二階堂黎人、森博嗣、太田忠司、井上夢人、笠井潔、芦辺拓、京極夏彦、白倉由美、東野圭吾
豪華作家陣が漫画でペットと登場!!
ミステリを愛しすぎた漫画家・喜国雅彦が描く密室殺人!アリバイトリック!ダイイングメッセージ!不可能犯罪!ミステリ界震撼の喜国ミステリ漫画がついに単行本化!
『ミステリに至る病』をはじめ、あちこちに描いたミステリ関連作品をすべて収録!!
山口雅也氏とのマニア鼎談付き!



 雑誌「メフィスト」に連載されていた喜国雅彦「ミステリに至る病」が面白かった、その記憶があった。
 喜国雅彦の漫画といえば、「めぞん一刻」が連載中だった頃じゃないかと思うのだが、「ビッグコミックスピリッツ」にパンチラマンガ(?)を載せていたはずだ。そういう作風なんだろうくらいで、特に興味を持つこともなかった。購読した「メフィスト」に連載されていなければ読むはずも正直ない作家であり作品だったはずだ。
 それが、一読、なんだかすごく胸がいっぱいになった時があった。

 誰ももう振り返らない『本格』、時代遅れの『本格』、子供だましの……

 けれど、そんな『本格』をどうしても好きでたまらない、愛し続けずにいられない、そういう想いが溢れかえっている、そんなふうに感じるような一篇だった。そう記憶している。というより、そのセンチメンタルな感覚だけが残っていて、具体的なネタや構成は実は覚えてはいないのだが。確かに、そんな一篇があった。印象強い一篇だった……

 アパート住まいだったので、溜まった雑誌にはだんだんとさよならしないとならない。その一篇の載っていた「メフィスト」にも、やがてバイバイしてしまった。もしかしたら、いつか単行本にまとまるかもしれない。その時には、購入しよう……そう思った。

 そして、今回とうとう、やっと、という感じで、単行本化された。早速ネットから購入。せっせと読んだ。
 なつかしいものだった。ああ、こういうのもあったな、この「白樺荘事件」のネタ、今となってはさらに物悲しくなってしまったな、などと……
 が、あれ……? あの一篇、あれがないんじゃないか……?
 具体的なものは忘れてしまっても、読めば判ると思っていた。「白樺荘事件」麻雀だって、すぐに読んだときの感覚が甦った。他の回のも、読めば最初に雑誌上で読んだ時の……
 それなのに、印象強いはずの、読めば「これ!」と感じるはずの、あの回だけが、ない……?

 収録されなかったのか? けれど、連載分だけではページ数が足りずに他の作品まで載せているくらいだから、わざわざ未収録を作ることはないだろう。「封印作品」……になるようなネタは他にあるだろう(^^;)。ならば、いったい……
 ひょっとしたら、「これ」が「あれ」だったのか?
 それは、「私の本格買って下さい」エピソードで、これもちゃんと読んだ記憶がある。ムードなどは確かにこんな感じではあるのだが……
 いろいろネットで検索もしてみたのだが、別に誰も「あの回が収録されてない!?」とか愕然としていないので、たぶん私の脳内で感動感傷が美化されて、『幻の感動作』を造り出してしまったのだろう。そして、現物を読んでも、それと気がつくことができない……

 この体験もなんだか小さなミステリみたいだな、と思った。黒後家蜘蛛の会に持ち込んだら、ひょっとして誰かが、もっと意表を突いた解釈でも聴かせてくれたかもしれない。そして、ヘンリーが……
 「黒後家蜘蛛の会」も、もはや書き継がれることはない。三番館も。
 「白樺荘事件」同様、「幻の感動作」も、幻のまま感傷回路の底で温めていよう。解釈などやめてしまって。
……そんなふうに、書きながら考え始めた――。


メフィストの漫画

必殺仕置人第7話「閉じたまなこに深い淵」

白く濁った検校の、その目は果たして見えるのか?
さがす敵と瓜二つ。しかし……
確証を掴めぬままに娘、お糸は死んでいく――


 この話も、初期に比べるとだいぶ「薄い」感じになっている。パターンが決まってきた、というところか。仕置人たちのキャラクターが生きているので、その面白さで飽きはしないのだけれども。
 印象に残るのは、やはりエンディング。おきんが主水に小判を放り投げて、「し・お・き・りょ・う(^^)」。それに対してなんと主水、「おきん、俺はなんにもしちゃいねえんだ(この回、ほんとになんにもしてない)。この銭はおめえに返すよ」などと言っているのだ。のちのがめつくせこい主水の姿に慣れ親しんでいると、この清廉潔白さ(笑)は一種サプライズだ。

必殺仕置人 VOL.3 ◆20%OFF!

サーニンとマックスについての覚え書き

☆サーニンのキャラクターは、当初なかなかはっきりしていなかったように思う。マックスとの差別化もさほどではなく、ただ泣き虫マックスと比べて腕白でタフだなという程度での。。。
 けれど、サーニンのまっすぐな気性は、マックスの素直さとは実は全く異なった、全身全霊での祈り・努力・懸命さなのだと。。。
 サーニンはたぶん本当は、グレアムと変わらないほどに絶望や虚無を抱えてしまっているのだ。だが、サーニンはそれを許容するつもりがない。そんなものに打ちのめされる予定も入っていないのだ。
 だから? 番外編での「S(SARNIN)」ではいきなり理由も説明もなくソロモンが登場できる。あるいはソロモンとサーニンには、深い部分での共通点が存在するかもしれないから。。。

☆個人的に、どうしてもマックスにだけは感情移入できなかった。。。
 グレアムには深く、アンジーにはきつく、サーニンには哀しく、打たれ、惹かれ、没入しながら、マックスだけは。。。
 それが変わるまでは、「奴らが消えた夜」まで待たなければならなかった。
 マックスはたぶん、一番「普通」だったのだ。どんなに虐げられ、阻害されても、いじけることなく歪むことなく、、、
 だから、「奴らが消えた夜」でのマックスに感情移入できるというのは、マックスにとってどれだけ「消えた夜」での体験がきつかったのかということなのかもしれない。それは、マックスにプラスだったのかマイナスだったのか、、、

はみだしっ子シリーズ 全13巻+2冊 三原順/作

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