「新必殺仕置人」

僕の初必殺体験は、たぶん小学生の頃、親が起きているのにつられて夜更かししていた頃に、何とはなしに見ていたという程度だったと思います。「爪楊枝を口にくわえて、寝ている相手の首筋に顔を近づけ、そして、くさっ(あれは、ぐさっ、ではないわなあ)とやっていた……という記憶があります。でも、そんな「爪楊枝」なんていう殺し方の仕置人なんていたかしらん……どうやら、からくり人の新之介だったようです。爪楊枝ではなくて、れっきとした含み針での殺しを見ていたらしい。が、確証はありません。何しろ20年近く前のことであります。

 ちゃんと「必殺」というものだと認識して見ていたのは、「商売人」のときで、ただ、水戸黄門や遠山の金さんのような「連続もの」(シーズンが変わっても主要メンバーに変動がない、という意味での)だと思っていたので、最終回で新次が死んでしまったときは仰天いたしました。その続きの「富嶽百景殺し旅」を経て、「うらごろし」を見ている最中、なんだか知らないけれど僕の住んでいた岡山県の山奥では放送局の編成に異動があったらしく、突然見られなくなってしまいました。が、正直その頃はまだがむしゃらな執着はなかったので辛抱できたのであります。新聞のテレビ欄で、見ることのできなくなった「うらごろし」のサブタイトルだけを眺めて、「ほお、最終回か、なに、『悪用した催眠術! 勝てるか先生』だと、ずいぶんエキサイティングなサブタイトルだな」などと思っていた程度でありました。

 高校を出て、大学が山梨の方だったのでこちらに来てみると、テレビ朝日で午後4時ぐらいから、「仕留人」が再放送されている時期でした。学校が終わって家に帰るとちょうどやっている時間だったので焼き鳥などつまみながら見ていて、「あっ、最終回でまた仕留人が死んだ。するってえと、この『必殺』つうのは、最終回で主役級のキャラが死ぬとゆー時代劇なのだな」程度の理解をしつつ、次の「仕置屋」「仕業人」と見ていて──当時は、主水シリーズばかりを連続して再放送していましたから──夜には本放送の「仕事人III 」をやっていたと思うのですが、なんだかこっちは見なかった。あんまりスリリングでなかったというのが本音のところであります。

 でも、まだこのころは、「時代劇なんて、所詮はダサい、オトナの見るものである」という固定観念があり、若者はやっぱりビデオに録るならアニメとか特撮とかいったカウンター・カルチャーだぜ」とエラそうに考えていた。

 コロんだのは、次の「新・仕置人」でした。それも、最終回1歩手前の「愛情無用」の回で、大ショックを受けました。

 「なんだっ、これはっ!」という、見終わった後の衝撃。

 しまった。こんな凄いものをビデオ録りしなかった。ルーティンワークのアニメ・特撮を録っている暇があったら、こっちの方が記録しておくべき芸術品じゃないか。
 明日からは、これをビデオに録ろう。
 知らなかったのだ。その明日が、「解散無用」であり、最終回になったなんて。
 でも、おかげで、「解散無用」はしっかり録画でき、何度となく見直すことができることとなったのでした。

 しかも、なぜかその後時々テレビ朝日は再放映漏れだったのかどうか知らないけれど、「新・仕置人」の何本かを放映してくれたので、僕の「新・仕置人」録画数はいささかなり増えたのでありました。(しかし、それがなぜか「密告無用」「悪縁無用」「約束無用」だったので……おいおい、これは巳代松ファンを増やすための何者かの策略だったのか? てな感じもいたします)

 何しろ転んだのが「新必殺仕置人」ですので、好きなキャラとくれば当然の件の作品のキャラ達ということになってきます。
 ダントツは、ありふれているとは思いますが、念仏の鉄であります。大学時代、最終回「解散無用」のラストシーン、鉄が辰蔵を仕留めた後、ゆっくりと歩き出し、敷居を跨いで外に出る、そのとき、倒れるな、死なないでくれ、そのまま歩き続けてくれ、死ぬんじゃない、と心から祈っておりました。そして、見つめることのできなかった中村主水の代わり(といっては偉そうだけど)最後までをじいっと見つめ続けていました。
 ここまで感情移入し、死ぬな死ぬなと思ったことは滅多にあることではありません。小説ではグレアム・グリーンの「ジュネーヴのドクター・フィッシャーあるいは爆弾パーティ」という作品でヒロインの運命を予想したときに同じように「死ぬな、死なないでくれ」と思ったりしたとは思います。テレビドラマ等ではやっぱり鉄の最期のシーン以外にはちょっと思い出せません。
 これが録画できたことが、たぶん人生を狂わせたに違いないのであります。いったい何回見返したんだろう……。

 死んでも、「約束無用」や「解散無用」だけはあの世に抱いていきたい。

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