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エラリー・クイーン「間違いの悲劇」

往年の大女優が怪死を遂げたとき、折悪しくハリウッドに居合わせたエラリーは現場へ急行する。しかし、ダイイング・メッセージや消えた遺言状、徐々に明らかになる背景、そして続発する事件に翻弄され、幾度も袋小路を踏み惑うことに。シェークスピアをこよなく愛した女優の居城を十重二十重に繞る謎の真相とは―。創作の過程をも窺わせる、巨匠エラリー・クイーン最後の聖典。

 エラリー・クイーンの、本当に最後の作品として――ただし梗概のみで存在した『間違いの悲劇』が、ついに翻訳出版された。
 タイトルがなんとも言えないじゃないですか、という感じだ。言うまでもない、『~の悲劇』というタイトル、これはクイーンの「ドルリー・レーン4部作」の基本的な通しタイトルに他ならない。
 『Xの悲劇』『Yの悲劇』『Zの悲劇』と続き、草原推理文庫では原題に則して『レーン最後の事件』と訳されたが、角川文庫では『最後の悲劇』と揃えている、クイーンの名作シリーズ、ドルリー・レーンの悲劇4部作――。

 作家エラリー・クイーンは、この4部作と主役たる老名探偵ドルリー・レーンはバーナビー・ロスという別名義で創作し、クイーン名義では自身と同名の若き名探偵エラリー・クイーンを活躍させた。探偵エラリーは長編でも短編でも数多くの舞台を持ったが、『~の悲劇』というタイトルの長編に出陣したことはない。短編は捜せばあるのかもしれないが、本格的に腰を据えた長編では、第1作の『ローマ帽子の秘密』から最終作『心地よく秘密めいた場所』まで、一度も書かれていないはずだ。
 『~の悲劇』は、作家クイーンにとっても、このタイトルはレーンのものだから、という意識が在ったのではないか?
 その「悲劇タイトル」で、最後に梗概だけ残された探偵クイーンの長編が在る……聞いただけで心が躍って当然だろう。作家クイーンに何かしら期するところがあってのタイトル選択かと感じられるからだ。

 もしもこれが、『カーテン』のように「最後の事件」の名を与えられたものならば、――クリスティの『カーテン』は、名探偵エルキュール・ポアロの最後の事件だった――いよいよエラリー最後の事件では、何かドルリー・レーンや悲劇4部作との連関が、暗喩的な意味合い程度にでも語られるのではないか……そんな戦慄できるような妄想すらできたはずだ。

 しかし、纏められた本の中では「エラリー・クイーン最後の事件」と肩書きが付されたものの、それは「作家クイーンの」最後の事件という意味でしかなく、探偵クイーンにとっては、エピソードの一つでしかありえないものだった。梗概からは、『十日間の不思議』や『九尾の猫』やに並ぶ魅力的なミステリの可能性がはっきりと見えている。最終作と言われていた『心地よく秘密めいた場所』が個人的に楽しめないものだったので、この「最終作」が完成してくれていればと残念なほどだ。けれど、『最後の悲劇』や『カーテン』とは根本が違う。『スリーピング・マーダー』(ミス・マープル最後の事件)でしかない。
 贅沢なだけではあるのだが、せっかくの「~の悲劇」タイトル――このタイトルを付された探偵クイーンの最後の長編には、ぜひとも「最後の事件」であってほしかったのだ。
 レーンや、ポアロが迎えた幕引を、果たして探偵エラリー・クイーンは……

 『間違いの悲劇』の「間違い」とは、何を指し示す言葉だったのか。「X」「Y」「Z」には、それぞれ趣を異にした意味が持たされていたのだが……

間違いの悲劇
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