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平井和正「狼よ、故郷を見よ」

おれは犬神明、何を隠そうレッキとした狼男なのである。そのおれがいま向かっているのは、日本最後の秘境といわれる人跡未踏の大峰山脈──そのさらに奥深くにある隠れ里、すなわち狼人間の故郷・犬神の里なのだ。ところがおれを出迎えたのは大口径ライフルから発射された巨弾だった......。不死身の狼男の壮絶な戦いを描く、アダルト・ウルフガイシリーズ。

平井和正の「ウルフガイ」を他人様に紹介しようとするとき、いつもどうしたものかなと思うのは、「順番」についてのことだったりする。

いや、佐々木丸美を考えてもらえば、似たようなことを思ったこと、ある人も多いのでないかしらん?
やっぱりまず「雪」だよなーとか、孤児シリーズは順番通り、館シリーズも順番通り、でも「夢館」のことを思えばそれより前に孤児シリーズは読んでおいてもらいたいし、「伝説」2作は当然館シリーズのあと、「罪」にしたって……とか。

どこから読んだって嵌るときは嵌るのだけど、何となく、一番「効果的」な読み方(自分なりの)を推薦したくなってしまいませんか?(笑)

平井和正の狼男シリーズも、いや実際には佐々木丸美作品がほとんど全編リンクしているのと同様に平井和正作品もそんなところがあるので狼男に限らないのだが、特に「アダルト・ウルフガイ」について言えば、中編連作の趣があったために、1冊にまとまったときの編集が各出版社で異なっていたりして、随分ややこしいことになっているのだ。

しかも、その中編連作の各エピソードが、相互連関がないものならば別にいいのだが(世間一般の「シリーズもの」はそういう場合も多い。名探偵もののシリーズが、大抵「どれから読んでも、どの順番で読んでも、別に問題ない」のと同じである。もちろん、島田荘司のシリーズや高木彬光の墨野隴人などの例外はある)、アダルト・ウルフガイシリーズについては、事件の連関というより、事件を1つ体験することによって、主人公のキャラクター等に変遷があるわけだから、時系列に添って読んでいくのが一番楽しめる読み方だろうと振り返って思ってしまうのだ。……ぐちゃぐちゃな順番で読んでしまった人間としては(笑)。

この「狼よ、故郷を見よ」は、現在入手できる電子書籍や、古書店・図書館に存在している可能性の高い角川文庫版では、表題作として収録されている。「地底の狼男」という中編とセットになっているはずだ。他に、ハヤカワ文庫版でもそうなっている。
唯一、祥伝社ノンノベル版では、「狼のバラード」の表題で、「地底の狼男」「狼よ、故郷を見よ」「人狼、暁に死す」の3つが収録されている。おかげで購入するのが私にとっては随分後回しになってしまった。

というのは、前に「狼男だよ」のエントリーで書いたとおり、最初に「狼男だよ」と「リオの狼男」を購入して読んでしまっていたからなのだ。「狼男だよ」は紛れもないアダルト・ウルフガイシリーズ第1作であるが、「リオの狼男」はハヤカワ文庫版で言えば「狼よ、故郷を見よ」に続く第3冊目に当たる。そして、この「リオの狼男」には表題作以外に、「人狼、暁に死す」が収録されていたのだ。

「狼男だよ」を読んだ直後に「リオの狼男」(正確には、収録位置が先だった「人狼、暁に死す」)を読んだときの、主人公アダルト犬神明のキャラクターの違いに大いなる違和感をおぼえたことも以前のエントリーで書いた。それはそうだ、「狼よ、故郷を見よ」という体験をした以上、犬神明が「狼男だよ」の犬神明のままでいられるはずがない。シリーズが進むにつれ、主人公の意識が変化していく……そんなシリーズは初めてだったので、大いに混乱したものだ。

「狼よ、故郷を見よ」を読んでみたかったのだが、ハヤカワ文庫版が全然売っておらず、見かけるのは祥伝社「狼のバラード」。もちろん、これを買えばいいわけなのだが、少ないお小遣いをやりくりして本を買っている中学生にとっては、「人狼、暁に死す」という作品がダブって入っている本を新たに購入することには、抵抗があった。「だって、この話はもう買ってる」と思ってしまうわけだ。3作品揃っての値段を払って、1冊買ってしまう。なのに、3作品のうち1つは、もうすでに買ってある。ダブりジャン!というわけである。

おかげさまで、私が「狼よ、故郷を見よ」で犬神明が経験することになった物語を読めたのは、遥か先、もうすでに犬神明のずーっと先の物語を読み終わってからのことになってしまったのだ……

「地底の狼男」、そして「狼よ、故郷を見よ」は、おそらく「狼男だよ」の次に読んでいたなら、不満も文句も何にも感じずに読めていた作品だっただろう。しかし、すでに「人狼、暁に死す」はおろか、「人狼戦線」も「人狼白書」も読んでから、今さらのように読んだこの作品たちは、今ひとつ心に食い入ってくることがなかったというのを自白しておこう。特に「地底の狼男」は「狼男だよ」と「狼よ、故郷を見よ」との時間的ギャップを埋めるためという位置づけくらいにしか感じられず、あとはせいぜい矢島という人物が初登場するという意味での重要作品と言えば言える、くらいに私にとっては、「薄い」。

「狼よ、故郷を見よ」は幾分か違う。「人狼戦線」等の重厚な作品の圧倒的な迫力、情念、そういったものを先に体験してしまったために、短いよ足りないよと感じてしまうのだが、それでも、この中編は、いよいよ犬神明が「狼男だよ」と脳天気に自己紹介していられる場所から引き剥がされた、情念が発動し始めた、そういった謂わば「転換点」に違いない。
が、それでもなお、やはり後付けでの読み方だったがために、感傷も感動もじゅうぶんに味わいきれなかった憾みがあるのだ。

だから、言ってしまいたくなる。「順番通り読めよー」。おせーて、やるから。(笑)
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