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平井和正「人狼戦線」

月齢十二日、満月期にさしかかった“おれ”こと狼男・犬神明のもとを訪れた一人の美女。さる筋から脅迫を受けているという彼女を助けるべく行動に出たおれを、巧妙に仕組まれた罠が待ち受けていた。世界平和促進会議なる組織の手に落ちてしまったおれに下された指令とは、日本で秘密裏に進行している核武装化計画の確証をつかめというものだった…。

アダルト・ウルフガイシリーズの中でも、かなり人気のある長編になる。その人気は、角川文庫が初めてこのシリーズを刊行しだしたとき、いきなりこの長編から開始したことにも顕れているだろう。第1作の「狼男だよ」をさしおいて、というより、ここまでのアダルト犬神明の軌跡の全てをさしおいて、いきなりこの巻からである。

理由は「人気」ということ以外にも考えられるだろう。つまり、「狼男だよ」~「人狼地獄篇」(つまり、「魔境の狼男」)までは、ハヤカワ文庫ですでに刊行済みだったということだ。そして、「虎よ!虎よ!」は祥伝社ノンノベルでは「人狼戦線」より後続の「狼は泣かず」とカップリングで刊行され、シリーズナンバーとしては「人狼戦線」が先に来ている。つまり、ハヤカワ文庫のラインの「続き」として考えるなら、「人狼戦線」の文庫化は確かに「待ってました!」なことにちがいないのだ。

でも、そのあとは第一作「狼男だよ」が刊行されて、あとは順番通り……そして、何度も書いたように、ハヤカワ文庫やノンノベルの収録の仕方と違った「複雑な様相」が現出してくるのだけれどもね。

さて、「人狼戦線」の何がそんなに人気だったのか。
「虎よ!虎よ!」がアダルト犬神明にとっての1つの転轍ポイントであり、次の「狼は泣かず」に進むにはこの長編作品が必要だった……それは、犬神明が「無罪」であることを失い、そして何をその代わりに得たのか、常に不死身、無敵で突き進んできた犬神明が、「人狼、暁に死す」「虎よ!虎よ!」と「スパイダーマン」の地獄巡りをそのまま再演させられて、その存在基盤をゆるがせにされ、そこからどう復活再生を遂げたか。
スパイダーマン・小森ユウのその後については、誰も知らない。もはや立ち直る術を持たず、暗黒の中に堕ちたままなのか、それとも?
だが、アダルト犬神明は再生した。不死身性を失い、拠り所を失い、「人間の姿をした狼」ではなく、「狼の魂を持った人間」として自己を認識し、そして、ならば……と。

シリーズを再読して今さらのことなのだが、エンディングがいわゆる「ハッピーエンド」らしさを持って綴じているのは、この「人狼戦線」が初めてなのだ。あの脳天気な「狼男だよ」ですら、3つのエピソードのいずれもエンディングは陰鬱でやるせないものだった。一度たりとも、「アダルト・ウルフガイ・シリーズ」が希望や楽しさを持って綴じていたことはなかった。
この「人狼戦線」こそ、そのアダルト犬神明の血と暴力に呪われた青春が、がらりと様相を違えた瞬間だったのだ。

この次の「狼は泣かず」を皮切りに、アダルト犬神明は次のステージに降り立つことになる。そこから、状況はまた一変するのだが……

つくづく刊行順、時系列順に読みたかったと思ってしまうのは、繰り言になるから、もう言わない(笑)。



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