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ジェフリー・ディーヴァー「エンプティー・チェア」

「リンカーン・ライム」シリーズ第3弾。本作は本拠地ニューヨークを離れて、ノースカロライナ州を舞台とする。四肢麻痺であるライムが脊髄再生手術のために訪れた病院で、突然、捜査協力を求められる。土地勘のない未知の環境では、さしものライムも「陸に上がった魚」だ。
2人の女性が誘拐された。容疑者は16歳の少年ギャレット・ハンロン。拉致現場に居合わせた青年を殺して逃走したとみられる。通常「婦女誘拐の場合、発生から24時間が勝負」だ。「それを過ぎると、誘拐犯の目に被害者は物として映るようになり、殺すことに抵抗を感じなくなる」。事件発生からすでに4時間が経過している。少年が逃げ込んだのは広大な森の中の湿地帯。タイムリミットが刻々と迫る。

今回も捜査のパートナーはアメリア・サックス。車椅子から動けないライムの手となり足となる。しかし事件は拉致監禁にとどまらなかった。事件は四方八方へ広がり二転三転する。本作で、アメリアは、ライムの指令を振り切って単独行動に走る。証拠分析を真髄とするライムと、直感を頼りにするアメリアとの直接対決が見ものだ。互いに相手のやり方を知り尽くした2人が出し抜き合う頭脳合戦。抜群のキレをみせながら、なぜだかアメリアの気持ちは読めないライム。2人の恋心もモノローグに終始し、関係が少しも進展していかない。気持ちを伝え合わないもどかしさに重ねられて対決はスリリングに展開する。

息もつかせぬストーリーは、最後の最後まで緊張感を持続させる。圧倒的なおもしろさで期待を決して裏切らない。



 リンカーン・ライムシリーズ第3作。
 第1作「ボーン・コレクター」、第2作「コフィン・ダンサー」がいずれもライムが相手取る「犯人」を指したタイトルだったのに比べ、今作のこれは意味深ではあるがいささか抽象的なものになっている。具体的な名称としては作中で精神分析療法の名前のように出てくるが、特に物語にとって必要な療法だったようでもない。むしろ、アメリア・サックスやライム自身の心の中を暗示するタイトルとして在るんだろう。

 第1作以来、この鑑識ストーリーの迫力には圧倒されっぱなしで、おかげで、他の警察ものを読んでも鑑識的な部分ではどうしても物足りなさをおぼえるようになってしまった(^^;)。ライムがいれば、と思ってしまう(笑)。

 さて、いつも犯人の正体その他で気持ちよくびっくりさせてくれるディーヴァー作品だが、今回も期待に背かず、最後の最後までひっくり返し続けてくれた。ミスディレクションも満載で、力業に次ぐ力業には恐れ入るばかり。
 ただし、ライムがジムを罠にかけるシーンは、これは描写上アンフェアと言ってしまっていいだろう。これはジムの視点で描くことが可能なシーンだったのだから、この瑕瑾はなくしてほしかった。

 いろいろな意味ではらはらさせてくれた作品だったが、巻末の解説を先に読んだのは間違いだった(笑)。未読の人は、とりあえず解説は後回しにしましょう。解説を先に読むと、決してリンカーン・ライムシリーズはこれで終わりではないと確定してしまうので、リディアすらもが犯人側だったと判明し、ライム絶体絶命の場面で章が変わってお墓のシーンとなった、これは作者の一生懸命最後までハラハラさせてくれようという心配り(笑)なのだから、ちゃんとハラハラしてあげるべきなのだ。解説は後回しにしましょう。


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